「主夫」や「兼業主夫」を名乗るパパたちによる秘密結社「主夫の友」がこのほど結成され、「入社説明会」が6月27日、文京区のサイボウズセミナールームで開かれた。主夫度30~90%の男性7人が登壇したトークショーでは、妻から「産むだけ産むから育ててほしい」と言われた話や、部下を連れて帰宅する昭和の親父さながら、「今からみんなで行くから」とママ友がぞろぞろ来て接待をさせられた話、主夫の「営業時間」は6時から20時、「休暇」を10日間取って一人旅に出る話など、7人7様の主夫の姿が赤裸々に語られた。
(堀込泰三さん)
CEO(ちょっとエグゼクティブなお父ちゃん)に就任した文京区在住の堀込泰三さんは「イクメンブームだけど、普通のパパには届いていない部分があり、パラダイムシフトが起こらない。志はマジメだけど手段は柔らかくしたかった」と、「主夫の友」結成の理由を語る。「政府は2020年に女性の管理職を3割にという目標を掲げている。ならば2020年までに男性の3割を主夫にしよう」と鼻息が荒い。入社資格は、主夫と名乗っていればよく、主夫を増やすことのお手伝いをしたい人なら女性でも可能だ。
「子育て主夫青春物語」の著書がある堀込さんは、大手企業に勤めていたころ長男が生まれ、妻が育児休業を取れないことを知り、自ら育休を取って「専業主夫」に。妻の海外赴任にも同行したが、1年のはずが予想外の滞在延長となり、一度は帰国して復職したものの、悩んだ末、退職の道を選んだ。現在はフリーの翻訳家として仕事をするかたわら、家事育児も担っている。同様に「主夫」を自称する個性豊かなパパ友が集まったランチ会で、「主夫の友」構想が固まったという。
(杉山錠士さん)
兼業主夫放送作家を名乗る杉山錠士さんは「秘密結社というのは、主張が公に認められていない団体のこと。政治でも宗教でもない、家庭的秘密結社」と基調講演。杉山さんはフリーなので、フルタイムで「休めない」という妻に代わり、保育園の送迎や予防接種、健診、料理などを担ってきた。しかし、仕事を理由に家庭をおろそかにする妻とはやっていけないと思い、ひそかに離婚を決意。「親権が取れるよう、家事育児の主体が自分であることを証明するため」、兼業主夫を名乗るようになった。すると不思議なことに、帰宅して家の中が汚いと「なぜ片づけないんだ」と不満に思っていたことが「自分がやるべきことをやってなくてごめん」に変わり、けんかが激減。「主夫と名乗ったことでふっきれた」と話す。そんなエピソードはコミックエッセイ「新ニッポンの父ちゃん~兼業主夫ですが、なにか?~」にもつづられている。
(まるで芸人。主夫による爆笑トークライブ)
主夫7人のトークでは、「妻が台所に入る率は0%」「弁当の具を詰めただけで私が作ったと主張するのはいかがなものか」「たまに買い物に行ったりしないで欲しいよね。それ、もう買ってあるよ、って」などというエピソードで盛り上がった。主夫になったきっかけは自らの病気だったり、親の介護だったり。「最初はネクタイを締めて家事をしていた。妻のサポートに徹しようと決め、髪の毛を金髪にしたらふっきれた」という人や、「実の親に、子育てやりなよ、と言われて、ああこれでいいかな、と思えた」という人もいた。一方で「選択肢がなかったから」とすんなり主夫業に入った人も。「性別の問題じゃないよね。求める家事のレベルって、自分の親が見本になっているかも」
(活動はNPO法人ファザーリング・ジャパン「非公認」)
会場からは「1年前から主夫をしている。なんでみなさんそんなに楽しそうなんですか? 旅行に行っても、妻の稼いだお金だからと罪悪感を持ってしまう」という質問も飛び出した。「我が家は子どもにもちゃんと、これはママが稼いだお金で買ったものだ、などと伝えている」「プライドやもともとあった価値観は壊さないと。ウチはウチ、でいいと思う」「うちの子は4歳ぐらいまで、パパの仕事はバルーンアートだと思っていた。パパが笑顔でいることが大事。稼ぎの大黒柱ではなく、精神的支柱でいいのでは」
(会場には大勢の人が詰めかけた)
秘密結社「主夫の友」顧問に就任した少子化ジャーナリストで「専業主婦になりたい女たち」の著書がある白河桃子さんは「女子大生からの質問。夫がもし専業主夫になると言ったら嫌だと言う。専業になると、再就職はできないし大きなリスクを抱えることになるのでは」と発言。これに対しては「最大のリスクは妻の産休をどう乗り切るかだった」「家庭内をうまく回すためには自分が主夫にならない方がリスク」「親の介護や家計のやりくりを総合的に考えると我が家には最善」と、それぞれの答えが返ってきた。多様化する家族の姿をうかがわせる。
白河さんは、「専業主夫というと、働かないでラクしようとする男性、と見られてしまうから、普通の女性は敬遠するはず」と指摘。「主夫の多様性を見せていく必要があるのでは。どうも日本の男性は『男の沽券』が邪魔をしている。フランスの男性のようなラテン的感覚やロマンがあるといいですね」(敬)