東京都世田谷区には、いつでも好きな時間に出かけられて親子でゆっくり過ごしたり、遊んだり、子育て情報の交換をしたりできる「おでかけひろば」が17カ所ある。文京区の「ぴよぴよひろば」や「子育て広場」のような場所だ。文京区は直営か業者委託だが、世田谷の場合は区民運営のひろばがいくつかある。そのうち2カ所を訪ねてみた。
京王線の芦花公園駅からすぐ、UR芦花公園団地11号棟の1階に、「おでかけひろば ぶりっじ@roka」はある。UR都市整備機構が場所を提供し、世田谷区から受託しているNPO法人せたがや子育てネットが運営している。
月~金曜の10時~15時、誰でもふらっと立ち寄れる場としてオープンしており、土曜日も月1回開けている。子ども用の手洗い場もあるし、トイレには子ども用便器やおむつ交換台がある。スペース的に広くはないものの、設備面は充実。おもちゃ類は手作りしたものもあるから、温かみが感じられる。
なんといっても、外は緑がいっぱいで、とても駅近の便利な場所にあるとは思えない。別棟の集会所もイベントや会合に使うことがある。サルサとかネイルとか、子連れで来られるイベントも適宜開催。いずれもワンコイン程度の料金で、講師はもともとひろばに遊びに来ていた方たちだそうだ。
一時預かりも1日3人受け付けており、専任の保育士がいる。上の子の保護者会に行くとか、美容院に行くとか、息抜きをするのでも構わない。名称は「一時預かり」ではなく、「ハッピーセパレーション」となっている。
掲げているのは
・子どもたちが自由にのびのびと地域の中で成長する「場」
・地域の中でともに子どもの成長を喜べる仲間と出会う親の学びの「場」
・こどもの視点に立ち、地域や社会全体で子育てをする「場」
母体となっている方たちは、下北沢でカフェをやっていたママたちだ。世田谷区の委託を受ける前は、自主事業として週3回開けていたという。
世田谷子育てネット代表の松田妙子さんは、産前産後のママの家事支援や、保育園の2階を借りて子育て広場のような場を設ける活動を、国が制度化などする以前からやってきた筋金入りの子育て支援者だ。「支援」しているというより、利用者自身の気づきや「やろう」という気持ちを引き出すことが上手な方である。そして、「巻き込み力」がすごい。
「北沢おせっかいクラブ」代表の齋藤淳子さんは、小学校の謝恩会で松田さんと隣り合わせ、「子育ても一段落したから私もそろそろ何か手伝おうかしら」と何気なく言ったところ、「それじゃ、北沢地区におでかけひろばがないから、つくって」と頼まれてしまったという。そうしてできたのが、世田谷区北沢の住宅街にある教会の建物2階を改装した「おでかけひろば ぼっこ」だ。乳幼児連れの親が自由に集える場として2014年5月にオープンした。
北沢おせっかいクラブは近隣のPTA活動や青少年育成活動をやってきたママたちの集まりだ。「小中学生対象の事業はやってきたものの、乳幼児対象は初めて」と齋藤さん。
松田さんに言われて場所探しを始めたものの、苦労した。目星をつけた商店街の空き店舗は、貸してもらえなかったり、家賃が高かったり。がっかりして疲れ切っていたとき、「うちはどうかしら?」と、メンバーの1人が申し出た。自宅は教会で、日曜日だけ信者が集い、平日は使っていない建物があるというのだ。2階を改装して使うことがトントン拍子に決まった。
月曜~金曜の10時から15時まで開けている。預かりはしていない。レンジやポットがある食事スペース兼事務スペースと、遊び部屋の2部屋があり、こじんまりと家庭的だ。ときどき講師を呼んだイベントやお誕生会なども実施しているという。
齋藤さんは言う。「今のママたちは、やってもらうことに慣れている。『サービス』はよりどりみどり」。目が肥えているだけに、お金を払う価値がないと判断したら、イベントなどには来ない。齋藤さんらが子育てをしていた10年ぐらい前は、育児サークルがはやった。つまり、公的サービスが充実していなかったので、自分たちでやらなければならなかった。「でも今は違って、自分たちでやるというより『サービス』を受ける感覚のようです」
支援する側とされる側という関係性ではない、同じコミュニティーに暮らす者として共に考え行動する。フレキシブルでフラットな関係性をどうつくっていくのか。これはどの地域においても課題なのだろうと感じた。(敬)
〒157-0062
世田谷区南烏山2-30-11
UR芦花公園団地11号棟1階
月~金曜日 10時~15時
(祝祭日はおやすみです)
155-0031
東京都世田谷区北沢5-14-10
日本自由キリスト教会内
月~金曜日 10時~15時
(祝祭日はおやすみです)