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歴史ある占春園の池をきれいに/親子参加のかいぼりイベントで再生

「捕まえた! でっけ~」。自分の身体の半分ぐらいありそうな巨大なコイを抱えた小学生が、泥だらけになりながら得意気な笑顔を見せる。

「あ、カメがいた」「ミシシッピアカミミガメだ」

子どもたちがワイワイ、池の泥の中で騒いでいる。

「タモを使って小さい雑魚も捕まえてね」。NPO法人「生態工房」のお姉さんが指示する。

初春の日曜日、文京区大塚3丁目の占春園落英池の「かいぼり」があり、親子約100人が寒さをものともせず夢中で池の中の生き物「救出」作戦を展開した。この日は外来種のコイ十数匹、ゲンゴロウブナ30匹、アメリカザリガニなどを捕まえ、ギンブナなどの在来種を救出した。いつの時代のものか、黒電話まで掘り出された。

教育の森公園を下ったところにある占春園は、その昔水戸黄門の義理の弟、松平定元の屋敷があったところで、東京ドーム4.4個分の20万平方メートルの広さがあったという。1746年に当時の藩主が作らせたという石碑には、「我が公の庭は占春と名づく」と書かれており、「春をひとり占めできる園」という意味らしい。

明治時代になって東京高等師範学校の敷地内となり、その後東京教育大学、筑波大学へと引き継がれ、現在は筑波大学の所有で、筑波大学附属小学校と文京区が管理している。「柔道の父」であり東京高等師範学校校長だった嘉納治五郎の銅像も立っている。

ところが長年、あまり手を入れない管理だったこともあり、台風などによる倒木でたびたび閉鎖され、木々がうっそうと生い茂った「放任された自然」の庭園となっていた。そこで、東京高等師範学校から筑波大学に至る卒業生たちの同窓会「茗渓会」が整備に乗り出し、手始めに池のかいぼりに着手することになった。プロジェクトリーダーの水戸市植物公園園長の西川綾子さんは「嘉納治五郎の銅像から見た庭園が一番きれいだったはず。ところが今は日本庭園にありえない植物がたくさんある。まずは池をきれいにするところから始めたい」と話す。

協力を求めたNPO法人「生態工房」は、井の頭池をはじめ、各地の「かいぼり」を手がけてきた専門家集団だ。かいぼりとは、もともと農業に使うため池の手入れの作業だったという。近年は水をきれいにし、外来種駆除に役立つと注目されている。ポイントはいくつかあって、まずはコイやアメリカザリガニなど外来種を取り除くこと、池底の泥を乾かして取り出し(泥上げ)、酸素に触れさせること。水を入れ替えることによって、新たに水草が生えてくる。外来種がいなくなった池では在来種が増え、生態系が豊かになって水もきれいになる、というしくみだという。

かいぼり体験イベントではまずこれらのことを親子で学習したうえで、1月13日に池の水を抜いて「在来種救出イベント」、2月10日に「泥上げイベント」、3月3日に在来種が放流された。

泥上げイベントは地味ながら、雪が降りそうな極寒のただなか、親子が参加。

「落ち葉のある方が乾いていて軽いからね」

「足がはまって動けないよ~」

文字通り泥だらけになりながら、重い泥をすくってはバケツに入れ、池の外に搬出していた。

救出された在来種は1カ月半近く、筑波大附属小学校のプールで保護されていた。池に水がはられたあと、再び戻された。次なる目標は樹木の整備。すでに、日本庭園にふさわしくない60本を伐採しており、6月ごろには整備が完了するという。(敬)


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