昭和レトロな喫茶店がブームらしい。文京区内においても、個性豊かな昭和創業の喫茶店が生き残っている。一方で、後継者難などによる閉店も相次ぐ。喫茶店はコミュニティーの拠点だった――そんな視点から、文京シビックセンター1階のギャラリーシビックで、「‐まちのオアシス‐『文京喫茶』展・2」が4日(日)まで開かれている。
銭湯や旅館の記録や保存に携わってきた「文京建築会ユース」の企画。打ち合わせなどで利用してきた本郷の老舗喫茶店「ボンナ」が2018年に閉店、解体されたことをきっかけに、喫茶店の調査を始めたという。「喫茶店はご近所さんが交流したり、常連さんが物を持って来たり、店主が人生相談に乗ったりと、地域の人たちの居場所だとわかってきた。店主と客で育て上げた場所なのです」と、代表の栗生はるかさんは言う。
2022年に第一弾として1970年代に創業した喫茶店をインタビューして展示し、今回は80年代に創業した喫茶店を取り上げ、計30軒を取材した。1971年当時の文京区内の喫茶店の地図と、2024年の地図も展示している。
「2年前の展示から、すでに4~5軒閉店してしまった」と、文京建築会ユースメンバーで国学院大学観光まちづくり学部で教える黒本剛史さん。喫茶店調査を中心的に担ってきた。まちにおける喫茶店の価値は、個性が残っていること、だという。「チェーン店はどれも同じだが、喫茶店は一つひとつ違う。常連さんの土産が展示され、ママやマスターのこだわりの食事やケーキがあり、個性的」。そうした個性がまちの中にたくさんあれば選択肢も豊かだ。また、顔が見える場所がまちなかに少なくなる昨今、「自分がいていい場所、交流できる場所があるのが大事」。
会場では、喫茶店の歴史から始まり、文京区内の喫茶店の歴史も追い、地図は展示だけでなく、配布もされている。
現存する店、インタビュー後に閉店した店、さまざまだが、写真と文章で取材した喫茶店を展示している。内容からは、店の歴史や店主の思いが読み取れる。インタビューの動画が流れる「昭和のテレビ」も置かれている。
照明や家具、食器や看板、メニュー、常連客が持ち込んだ土産品などをまとめた「ディテール」コーナーも見ものだ。
来場者が喫茶店の懐かしい思い出を書いてはれる「懐かしエピソード」コーナーも。
2023年に惜しまれながら閉店した本郷の「RAN」のアフリカの民芸品など個性的な店内装飾が一角で再現されている。
再開発による立ち退きにあっても移転や仮店舗で営業を続ける「Micky’s Cafe」「LIVE COFFEE KIMURA」のような店もあれば、本郷の「ルオー」「麦」のように老舗でありながら店員や客が引き継いでいる店もある。2023年にオープンした「ELLA&LOUIS」は閉店した「貴苑」の内装をそのまま引き継いだ店だという。
展示は3日(土)10時~18時、4日(日)最終日は10時~17時まで。第12回文京・見どころ絵はがき大賞応募作品展も同時開催されている。(敬)