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伝説や霊性に包まれた琵琶の魅力たっぷり/本郷智さんの「琵琶演奏会」@九条TOKYO

「琵琶との出会いは、師である能楽師・安田登さんからのご紹介がきっかけでした」。琵琶奏者の本郷智さんは言う。安田さんがテレビ番組の共演を通じて知っていた琵琶奏者・作曲家の塩高和之氏を本郷さんに紹介し、「ギターの経験があるなら稽古してみては」と勧められたという。それまで琵琶の音色すら聴いたことはなかった。「これは自分に巡ってきたご縁だ」と思い、音色も聴かないまま入門をお願いしました」。2019年のことだ。その半年後くらいには舞台での演奏が決まっていた。その後も舞台で演奏することになり、「ヴァイオリンとの共演など活動の場も広がって、気がつけば琵琶奏者として演奏活動を続けるようになっていました」。

6月27日、東京メトロ千代田線「根津駅」から徒歩3分の「旬菜バル/九条TOKYO」で、本郷さんの「琵琶の演奏会」が開かれた。演奏を聴くだけでなく、琵琶にまつわる不思議な伝説を聞くことができた。「九条TOKYO」でのライブは今回で4回目。マスターの小林さんによると「本郷さんの奥さんがもともと『母と子のためのヴァイオリンライブ』をやっていて、琵琶奏者の夫を連れて来たのが始まりです」とのこと。「本郷さんが、『琵琶を作る工房が、もう日本に1軒しかないので、製造工程を映像に撮っている』というので、せっかくだからウチで映像を見せながら演奏会をやったら、と勧めました」

舞台には、2種類の琵琶が置かれている。琵琶にはいろいろな種類があるが、たいていの奏者は1本の琵琶だけで演奏する。「僕の場合、樂琵琶と薩摩琵琶の2本を演奏します。」と、本郷さんはそれぞれ指し示す。樂琵琶は主に雅楽で使われ、薩摩琵琶は物語を語る時、伴奏に使う。「樂琵琶の方が古いです」

琵琶はいったいどこから日本に来たのだろうか。「原形はペルシャの辺りにできたウードという楽器で、それがヨーロッパの方へいくとリュート、中国の方へいくとピーパーという楽器になる。シルクロードを通って日本に入って、樂琵琶と言われる楽器になりました」

「音楽ということでは、樂琵琶が使われる雅楽は、大陸から伝来したもので、日本独自の音楽は、平家琵琶が始まりです」と本郷さんは言う。平家琵琶は平家物語を語る際に用いられるもので樂琵琶を少し小型にしたもの。雅楽からさまざまな要素を受け継いではいるが、出来上がった音楽は雅楽の範疇には収まらない。まさに日本オリジナルの音楽、その後の邦楽の基礎となっていった。「平家琵琶は平家滅亡を契機として生まれたた音楽です。その後、武と音楽はより深く結び付き、近代まで続いてきたのではないでしょうか」と本郷さん。

さて、いよいよ「琵琶にまつわる不思議な伝説」そして「演奏」となる。「今はコンクールなどがあり、優勝といった評価があるのですが、昔はそういうのはありませんでした。素晴らしい演奏を褒めたいときはどうすると思いますか」と本郷さんは問いかける。「『霊性が高い龍が出てきた!』という表現をしたりします」。樂琵琶というのは、霊性の話が多く、幽霊の話もつきまとって伝説が多いという。樂琵琶の伝説を1つ挙げると、「839年の仁明(にんみょう)天皇のとき、藤原貞敏という最後の遣唐使がいて(最後の遣唐使は菅原道真公といわれるが、道真公は実際は行かなかった)帰国の時、琵琶三面を持ってきた。青山、獅子丸、玄上の3本。帰途で海がめちゃくちゃ荒れてしまった。龍神が大陸から琵琶を持っていかれるのを嫌がり、船を沈没させとさせようとしたので、獅子丸を海に沈めたら、遣唐使たちが帰ってくることができた」という伝説。時代が進んで、話は南北朝の崇公天皇まで続く。同じ流れに続く伝説が数多くある。どれもおもしろかったが、たくさんあって伝えきれないのが残念。本郷さんの演奏会に行けば、さらに聴けると思うので、ぜひ参加してほしい。

ここで樂琵琶の秘曲中の秘曲「啄木」の演奏。「800年前にできた曲が現代でどんな響きがするのか、お楽しみいただけたら。中世の音をそのまま聞く事もなかなかないのでは」と本郷さん。樂琵琶は横に構える。そういえば、大河ドラマの中で、紫式部が琵琶を横に構えて弾いていた、あの曲調のような。ゆったりと厳かな音色だ。

次は、薩摩琵琶の話に移る。演奏するのは、「平経正」。経正というのは清盛の甥にあたる。平家は清盛のあとは、だんだん貴族化し笛や琵琶の名手が多かった。経正は琵琶の名手で、仁和寺にあった「青山」という琵琶の銘器を下賜され演奏していたが、一ノ谷の合戦で死んでしまう。合戦の前に、琵琶湖の竹生島で素晴らしい演奏をして部下たちが涙するが、龍神が出て来て経正の袂に移った、という伝説がある。本郷さんは薩摩琵琶を手にしながら、「薩摩琵琶は、まず、遠くの情景から演奏が始まり、撥音高くなって幽霊が現れ、心情を語り去っていく。また遠景にもどって終わる、という形式なのです」と説明する。みんなでプリントされた歌詞を納得して見ながら、本郷さんの演奏を楽しんだ。薩摩琵琶は江戸時代に出来たもので、樂琵琶と違って琵琶を立てて弾く。

薩摩琵琶の音色は、響きを大事にしていて、むしろにごった音色だ。いろいろな技を使い、叩いたりして、ドラマチックに演奏、琵琶を続けられなかった経正の無念を表現していた。この日は、本郷さんのヴァイオリニストの妻と子どもたちも一緒だった。ご家族と観客も一緒に、最後は楽琵琶とヴァイオリンと打楽器の合奏で会場がいっそう盛り上がりフィナーレとなった。(稲葉洋子)

これからの九条TOKYOでの平和をテーマにしたイベント情報
◆8月1日(土)講演と琵琶演奏会のコラボ公演(テーマ:合戦と戦争と琵琶)
講演・野間宏之:昭和20年をマスコミはどう語ったか「逃げるな、火を消せ!防空法と主婦の友」
本郷智の琵琶と名和紀子の笙による演奏
◆8月8日(土)紙芝居「のばら」他と琵琶ライブ
◆8月9日(日)講演と琵琶演奏会のコラボ公演(テーマ:予祝と平和)
講演・野間宏之:昭和20年をマスコミはどう語ったか「面従腹背!我が友非国民」
本郷智の琵琶と名和紀子の笙による演奏

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