物語に寄り添いながら音楽を紡ぐ琵琶。日本古来の楽器の一つなのに、生で聴く機会は極めて少ない。そこで薩摩琵琶奏者の川嶋信子さんが始めたのが「まなびわ」だ。月1回、千駄木の「谷根千〈記憶の蔵〉」で、琵琶の歴史や楽器の解説をし、琵琶にふれる機会をつくっている。 祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり・・・節をつけた語りに合わせ、薩摩琵琶がジャラララーンと鳴ったり、激しく震えたり、キュルルルーっと風のような音を立てたり。琵琶は多彩な音を奏で、川嶋さんの語りを引き立てる。「まなびわ」はまず、川嶋さんの「実演」から始まる。
琵琶は古代、シルクロード経由で日本に伝わり、雅楽にも琵琶が使われる。九州を中心に広がったのが、目の不自由な僧がお経を唱えながら奏でる「盲僧琵琶」。源平合戦のあと、主に平家物語を語りながら奏でるようになったのが「平家琵琶」で、戦国時代、武士の修行のために改良されたのが「薩摩琵琶」だという。そのため、表現が激しく、男性的。バチも人の顔ぐらいある大きなものを使う。対して、明治時代に博多で生まれた「筑前琵琶」は女性的で華やかだという。 「では、まずバチの持ち方から」。確かに、手を大きく広げないと持てない大きさだ。正座して姿勢をただし、琵琶を縦に構える。「弦を弾くときはバチを胴にたたきつけるように」。激しくたたきつけて弾くこともあるため、胴体は硬い材のクワの木を使っているそうだ。 「琵琶は、ことばありきの音楽というのが特徴です」と川嶋さんは言う。だからスパルタ式で、いきなり歌もつけて奏でる。「須磨の浦~扇の風の誘はずば~」とうたいつつ、習いたての技術を駆使して弦を指で押さえ、トリロリロリ~とトレモロや、バチで下から弦をなぞる「スリバチ」もやってみた。奥が深い。 川嶋さんは大学で演劇を学び、役者として活動していたが、和のものにひかれ、15年ほど前、鶴田流岩佐鶴丈さんに師事。10年来、演奏活動を続け、「まなびわ」は3年ほど前から始めた。「とにかく触れるところから始めてほしい」。小学生から始め、米国在住で中学生となった現在もスカイプで習っている子もいるそうだ。1月と8月を除く毎月22日、15時からと19時から、大人2500円、小・中学生1000円で実施している。問い合わせは「まなびわ」サイトから。 http://manabiwa.com/manabiwa.html また、3月28日、千駄木の旧安田楠雄邸で、17時半と19時10分から、「しだれ桜と琵琶の夕べ」と題し、庭のしだれ桜の下で、「義経」などを演じる(すでに満席。晴れれば当日受付あり)。また、4月12日16時から、板橋区のときわ台天祖神社で、「桜舞う琵琶の音響く春の夕」と題して、筑前琵琶との共演で「祇園精舎」「壇ノ浦の合戦」などを演奏する。