Close

「一期一会」で百人百様の日本観光を/小石川に本部、通訳案内士の団体NPO日本文化体験交流塾

 「東京五輪が終わっても、外国人がまた来たい、と思える文化体験をいかに提供できるかが勝負」。小石川2丁目に本部があるNPO日本文化体験交流塾(IJCEE)の理事長、米原亮三さんは言う。IJCEEは通訳案内士800名以上を擁する日本最大の通訳案内士団体だ。通訳案内士とは、報酬を得て外国人に対して観光ガイド業務を行える国家資格であり、高い語学力と日本文化に対する深い造形が必要とされる。資格を取得した後も、経験と知識を積み上げなければ一人前のガイドにはなれない。「ガイドには日本文化に対する知識と誇りがなければ」。そのため、IJCEEでは会員のガイドに対して日光や築地などのツアーで、先輩に付いてガイド経験を積む機会を与えると共に、茶道や着付けといった日本文化研修も行っている。一人で日本文化講師と通訳案内士をこなすガイドが育つので、外国人観光客に好評だという。
畳が敷いてあり床の間がある和室。茶道や着付教室も開催する
 「Look at this!」「Isn’t it nice?」オーストラリアから来た観光客の団体が、わいわいと寿司づくりを楽しんでいた。IJCEEの大人気プログラムである寿司づくり体験に参加しているのだ。IJCEEの本部があるビルの一室は和室に改装されており、外国人向けの茶道や着付け、忍者体験、寿司づくりなどの体験プログラムが開催されている。体験プログラムの講師はIJCEEの寿司づくり講師養成研修を受け、分かりやすい英語で寿司の作り方や日本の食文化を紹介する。こうした文化体験プログラムの講師は、IJCEE主催の研修を受ければガイド資格が無くても務めることができる。料理が得意で、英語が大好き、そして人との触れ合いが大好きな主婦の方も多く活躍しているという。こうした文化体験プログラムは30種類以上ある。体験プログラムの他にも、皇居や築地ツアー、京都や鎌倉ツアーなど、100種類以上のショートツアー、および7~12日間のロングツアーも実施している。「百人百様のツーリズムを目指します」と米原さんは言う。
米原亮三さん
 米原さんはかつて東京都庁に32年間勤務し、ニューヨーク駐在や国際、観光部門の仕事に携わり、観光部部長も務めた。その中で感じていたのは、日本においては外国人観光客の受け入れメニューが不足している事だった。「日本の良さをもっともっと世界に伝えていきたい」と思い立ち、2008年に早期退職してNPOを立ち上げた。2013年には会員が出資して株式会社「True Japan Tour」を設立、外国人向け観光ツアーの企画やガイド業務の紹介を始めた。この8年間で会員数は1000を越え、体験やガイド、研修といった事業も急速に伸びている。
 「固有名詞を並べ立てても、外国人には通じない」と米原さんは考える。例えば伝通院の説明をするのに、「徳川家の~」と言っても外国人にはピンとこないので「サムライのヘッドの~」と言い換える。共通理解がある日本人同士だからこそ固有名詞は意味を持つのだ。そうでない外国人に対しては固有名詞よりも、鳥居とは何か、枯山水とは何かといった事を伝えなければならない。通訳案内士には、そういった日本文化の本質を伝える知識と語学力が必要不可欠なのだという。
和室には刀も
 外国人が最も興味を持つのは、茶懐石、禅宗、浮世絵に代表される江戸文化だそうだ。だからこそ「五輪招致のプレゼンでは、一期一会と言ってほしかった」と米原さんは言う。戦国の世、武将同士は一旦刀を置き、茶室で一生に一度のことと心得て互いに誠意を尽くす「一期一会」を大切にした。五輪でも、明日、あさっては戦うかもしれない者同士だが、東京という大きな茶室での今この時の出会いを大切にしよう。そんなメッセージを込める事ができたはず。「日本はもともと平和を尊び、異文化を認める土壌がある。そこにプライドを持ちたいものです」
 研修は通常、IJCEEの会員向けのものがほとんどだが、一般の方向けに4月9日(土)9時半から、文京シビックセンターで、「カリスマガイドに学ぶ!外国人おもてなし講座」を開催する。米原さんの他に、はとバス英語ガイドの第一人者である山口和加子氏が、外国人が「また来たい!」と思う日本にするために、参加者皆さんの個性を活かしたおもてなし法を提案する。「事務所がある文京区にも貢献していきたいと考えています」

Copyrights © 2007-2015 JIBUN. All rights reserved.
error: 右クリックはできません。