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谷根千はそれぞれがビジョンを持って活動している「共有都市」?/2017ソウル都市建築ビエンナーレに出展した学生さんに聞いてみた

韓国初のグローバル学術・展示会である「2017ソウル都市建築ビエンナーレ」が、韓国のトニムン(敦義門)博物館村、トムデムン(東大門)デザインプラザ(DDP)をはじめ、ソウル各地の歴史・産業の現場で一斉に行われた。開催期間は2017年9月2日~11月5日、テーマは「都市」と「建築」。世界50都市と40の大学、120の機関をはじめ計1万6200人が参加する大規模なグローバルイベントだったという。

今回JIBUNマガジンで取材したのは、「2017ソウル都市建築ビエンナーレ」のことではない。40の大学のうちの1つ、早稲田大学のチームが、出展のため、東京の町として「谷中・根津・千駄木のまち・ひと」を取材していた。チームの学生さんの1人である渡邊颯(わたなべはやて)さんに、取材を通してこの町で何を発見したり感じたりしたか聞いてみたいと思った。

 

渡邊さんは東京都国分寺市の高校から早稲田大学の建築学科に入学した。ものをつくったり絵を描いたりすることがもともと好きで建築学科を志望したそうだ。現在は大学院の1年生。

 

今回の出展は、「東京」という都市を研究展示してほしいとの依頼が早稲田大学にあり、建築情報学の研究室として「小林恵吾研究室」が担当に指名された。渡邊さんはその一員として参加した。

 

「2017年の春から、今回の都市建築ビエンナーレに向けて活動を始めました」と渡邊さんは言う。「東京の歴史の整理と、地域住民が主体となって行っている、地域に根差した活動を調査するプロジェクトを進めていく中で、今回のソウル都市建築ビエンナーレのテーマである『共有都市』として、谷根千(台東区谷中・文京区根津・同区千駄木)の姿が徐々に浮かび上がってきた」という。共有都市とは、同じ地域の中で種類豊かなさまざまな活動か活発に行われていて、その個人の活動を町で共有している都市のことだという。「それで、夏の期間に谷根千地域のさまざまな活動について、インタビューと調査を行い、その後それをもとに、9月に始まる展示に向けて都市の<あり方>を表現するコンテンツの作成に取り組みました」と語る。

 

インタビューや研究を通じてなにを思ったのだろう。

「谷根千という地域からは、良い意味で大きな計画やビジョンがあまり見えて来ない」のが、とても興味深いと思ったそうだ。「みながみなそれぞれに、自分のビジョンを持って地域で活動しているように見えました。価値観を押しつけるようなものではなくて、勝手にやっているという感じでしょうか」と話す。「でも勝手にやっていることだからこそ、個人個人が責任を持ってまちと向き合っていて、その姿はとてもすがすがしかったです」と続ける。

さらに、「『強すぎないたくさんのレイヤー(層)を持つ』ということが都市を面白くするひとつの方法なのだ」と思ったと言う。「誰かが一度に決めるとやっぱりどこかつまらなくなるんでしょうね」とも。

「活動する人たちがお互いに軽く批判し合っているようで、批判しながらとても嬉しそうであり、実はお互い誇りを持ち合っているのかも」と感じたそうだ。

 

 渡邊さんは「今回研究したこと、展示したことで感じたことを生かして、この先は建築に関わる者として、作るべきものと作りすぎてはいけないものを見極めながら住民が本当に必要なものを汲み取っていける建築家のあり方を探っていきたい」と語った。(稲葉洋子)


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