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ただいま出張中!千駄木旧安田邸のおひなさま

文京区千駄木5丁目にある旧安田楠雄邸庭園は、大正8年に藤田好三郎によって建てられ、同12年に安田財閥の創始者、安田善次郎の娘婿の善四郎が購入、以降、安田家の人々が長年にわたって大切に住んできた。

平成7年にご当主の楠雄氏が亡くなられ、夫人が公益財団法人日本ナショナルトラストに寄贈した。都指定名勝となり、たてもの応援団というNPOが管理運営し、水曜、土曜日に公開されてきたが、現在は休館中だ。

毎年「ひな飾り」「五月飾り」を展示し、多くの見学者が訪れるという。人形と道具は大変格調高いもので、すべて名工・三代永德齋(えいとくさい)の作。永德齋というのは、明治2年に京都から出て、日本橋に店を構えた人形店で、贅を尽くして丁寧に作られる人形は皇族や旧公家や財閥などの愛顧を受け、昭和の時代まで繁栄したそうだ。

そのおひなさまと五月飾りが、2019年3月2日(土)から4月7日(日)まで、静岡県三島市にある佐野美術館に展示された。東京から見に行った人も多く、私も友人たちと4月2日に訪れることができた。旧安田邸では何度か見ているおひなさまに会いに行った。美術館に展示されるとまた違う雰囲気だ。

展示されるまでのいきさつや思いを、旧安田邸のマネージャー、仰木ひろみさんに伺った。

「この度、旧安田邸は耐震補強工事のため、2018年9月から2019年11月までの1年ちょっとの間、閉館していますが、その間のおひなさまや五月飾りを、縁あって佐野美術館に預かっていただくことになり、そして展示もしていただけることになりました。おひなさまたちはいま、出張中なんです!」と仰木さん。

「ひな人形に詳しい林直輝さんが、以前より人形展示の折にいろいろ教えてくださっていましたが、今回、美術館との間を取り持ってくださいました。ご自身の永德齋人形コレクションといっしょに、旧安田邸のおひなさまや五月飾りを展示していただくことになりました」

美術館に行くと、展示室で壁に沿ってガラスケースにずらっと並べられていた。仰木さんが佐野美術館でおひなさまたちに再会した感想は。「おひなさまは、旧安田邸の『残月の間』の奥行きのある2畳の床の間に合わせて作られた7段飾りです。今回、展示してもらう機会を得、1か月という長い期間、人形や道具、五月飾りのすべてを目線の高さに平置き展示していただいたことで、繊細な部分まで皆さんに見ていただくことができてよかった」と語る。

「三代永德齋は、初代、二代とまた違い、大変リアルで迫力のある作品を作った方です。たてもの応援団の一人圓佛須美子さんが、この三代目永德齋、山川保次郎という人について調べ始め、保次郎が20年もアメリカの商業博物館で働いていたということをつきとめました。昭和になって日本に戻り、三代目を継いだという珍しい経歴の方」という。佐野美術館で、3月16日には永德齋の作品について林さんと圓佛さんのレクチャーがあり、午前、午後2回で多くの来館者が聞きに来たという。

2019年11月半ばから旧安田楠雄邸庭園は再開。来年の3月にはおひなさまも公開の予定。(稲葉洋子)

※旧安田邸の写真は2007年のJIBUNテレビ撮影動画からのショットです


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