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遊びでまちを元気に/プレイワーカー・関戸博樹さんに聞く

長い工事を経て、本駒込6丁目の六義公園がこのほど改装オープンした。大小の遊具や芝生広場、ジャブジャブ池もでき、大勢の親子でにぎわう。その一角に、竹とんぼやコマなどの昔遊び、手作りの液や道具で飛ばすシャボン玉遊び、空き箱などの素材を使って自由に工作ができるコーナーなど、子どもたちに魅力的な空間が展開されていた。 月1回程度開かれている文京プレーパークだ。

段ボールや紙製の筒を広げ、何やら組み立てていたのはフリーランスのプレイワーカー、 関戸博樹さんだ。「遊びあふれるまちへ!」をミッションに掲げるNPO法人日本冒険遊び場づくり協会 の代表でもある。「ただ素材を置くだけでなく、子どもに見えるように、遊びを発見できるようにするのが大人の役割 」と言う。

関戸さんは2つの筒をつなげて斜めの長いトンネルを作ろうとしていたのだが、ヨチヨチ歩きの幼児が寄ってきて、ピンポン玉を1つの筒に入れて遊び始めた。すぐに別の子が寄ってくる。「何やってるの? から遊びが始まる。子どもが創造するための環境や道具を用意するのが大人。遊び方の完成形を大人が決めていたら それは僕の遊びになってしまうから、いつでも明け渡す用意がないと」

子どもたちは、とにかく夢中で斜めになった筒の上からピンポン玉を入れて転がしては喜んでいる。上から筒をのぞくのが楽しいのだろうか。下からピンポン玉が出てくるのが面白いのだろうか。そのうち、下からピンポン玉を入れようと試みていた。「ああいう発想は子どもならではですよね」と関戸さんは笑う。

一緒にいた父親も見守るだけでなく、角度を変えたり別の箱と組み合わせたり、かかわり始めた。気づけば筒の上に別の構造物ができていて、遊びが広がっていた。「プレーパークは大人も元気にする」という関戸さんの言葉が実感できた。「自分に役割が出てくる。遊びを通して仲良くなる。大人が我が子だけでなく、他人の子どもたちを互いに見合う関係ができる。それはまちを元気にする」と関戸さんは言う。

冒険遊び場(プレーパーク)はもともとデンマークで生まれた活動だそうだ。立派な遊具を備えた公園づくりに携わっていた造園家の方 が、公園の隣の廃材が置かれた空き地の方で子どもたちが楽しそうに遊んでいるのを見て、子どもは自ら遊びをつくることが何より好きということを発見。おぜん立てした遊び場ではなく、子どもが遊びを生み出せる環境をつくろうと考えたそうだ。日本では1970年代に冒険遊び場の理念が伝わり、東京都の世田谷区で市民活動としてスタートした。

自らは渋谷のプレーパークのプレーリーダーを8年務めたあと、子どもが1歳半のとき「兼業主夫宣言」をして2年間子育て中心の生活をした。その後フリーランスのプレイワーカーとして人材育成や新規の立ち上げ支援、講演や執筆活動などの普及啓発など、子どもの遊び環境の向上にかかわる様々な活動をしている。 「子どもは遊ぶことで育つ。大人のやらせたい遊び、やらせたくない遊びをより分けるのではなく、子ども自身が遊びを手作りできる環境を設定する。それは生き方を手作りすることにつながる」

しかし最近は、たとえば水鉄砲遊びをしている子どもから、「水をかけてもいいですか」といたずらの許可を尋ねられるなど、子どもたちの普段の暮らしの中に大人の管理が色濃くなっている影響を感じる機会も増えたそうだ。関戸さんは、子ども時代は後先を考えるより、まずは心で感じることが大事と考えている。「子どもたちはたとえばたき火でマシュマロを焼こうとしているとき、火がうまく付かなくても試行錯誤のプロセスそのものを楽しむ力がある。マシュマロが焼けたという結果を遊びとしがちなのは大人だが、子どもはプロセスそのものを遊んでいる」

ストレス解消したいとひたすら穴を掘る子ども

文部科学省 の事業で日独青少年指導者セミナーというのがあり、昨年度ドイツ・ミュンヘンやバイロイトを訪問した。現地では、文化と遊びと教育がつながって一体的にとらえられていることに驚いたという。ミュンヘン市議会では基本構想に遊びでまちが発展するといった内容が記述されているという。イベントでも、手作りのモーターカー で十分遊んだあと、電気とガソリンの違いを知るなどといった遊び×教育の試み、本物の鍛冶職人が鍛冶屋遊びのブースを出すといった文化×遊びの活動が自然な形でみられる。また、移動型遊び場(モバイルプレイ )という活動もあり、160の個人や団体が加盟し、車やバスに遊べる道具を載せて、子どもとまちに遊びを届ける活動をしている。

「遊びの中で自己決定を繰り返し経験することは自分の力を知ること。これは民主主義を学ぶこと。自分の暮らしを自分の手で変えられるという実感にもつながる。 それぐらい遊びの重要性が認識されている。大人は過干渉せず、子ども自身が遊びを発見する機会を奪わない、そんな機運を日本にもつくっていきたい」(敬)


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