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Wの育児日記④一刻の猶予もない現実

不妊治療の教室に行くことになりました。今後の具体的な病院での治療方法、成功率に関するものでした。基本的には夫婦で参加が必須要件でした。私が参加した際には概ね10組くらいでした。

私の中では不妊治療というと、年齢の上の夫婦の抱える問題だろうと思っていました。ところが、この病院で見かける風景はというと、明らかに若い感じ(20歳代半ば)の方も通院していたのには驚きました。あくまでも私の私見ですが、不妊治療に年齢は関係ないということでした。

参加者も先ほど書いた通りで、世代も様々でした。ビデオを見ながら改めての病院の説明だったり、妊娠までの不妊治療のプロセスなどの映像が流されていました。その中で、女性の年齢に応じた妊娠率も出ていました。妻の年齢と妊娠率を見比べるとほぼ一桁。妻が以前から私に遠巻きながら「こどもが欲しい」と言い続けてきた意味がやっと分かった気がしました。一刻の猶予もない現実が待ち構えていたのです。

ビデオが終わり、一段落をしたところで、司会をされていた看護師の方からこんな言葉がかかりました。「このあと費用の話をしますので、聞きたい方だけ残ってください」。それまで優しい口調だった看護師の方の表情が急に変化しました。硬い表情というのか、何かを急き立てるような、一瞬の変化でした。何組かの夫婦は席を立ちました。妻は立とうとはしませんでした。

金額の説明がありました。紙が配布されましたが、書き込みはしないようにしてほしいということと、持ち帰りはできないとも言われました。映し出された金額は高額なものでした。一回当たりの診察料は法外なものではないものの、頭の中で計算をすれば0が何個も出てくるような感じでした。

カード払いができず、なぜか現金のみというのを今でもよく覚えています。最後に同意書と簡単な面談のようなものを先ほどの看護師としました。硬い表情はなく、なぜかまた満面の笑みでした。その際に妻に渡されたのはホルモン注射。自分で家で打つようにと渡されました。

病院を出るとすっかり暗くなっていました。2人で外に出るなり「なんか疲れたね」と口をそろえて言いました。とりあえず何か食べようと、駅前の飲食店に入りました。「これからどうなるんだろう。注射大丈夫かなあ」と妻。不安が現実のものになりました。

※不妊治療で子どもを授かった40代の会社員男性が育児のあれこれをつづります。

 


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