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モノや地域の価値高めたい/ご近所のシェアスペースUpcycle Salon(アップサイクルサロン)白山倉庫

小石川植物園にほど近い白山2丁目、住民しか通らないであろう小道の突き当りに、いかにも古そうな2階建ての建物が現れた。

左わきの急な階段を上がると、古めかしい下駄箱。これは目白台にかつてあった銭湯「月の湯」にあったもの。脇には更衣室にあったロッカーも置いてある。

視界が開けて、広い空間にキッチン。Upcycle Salon(アップサイクルサロン)白山倉庫(文京区白山2-19-9-2F)と名付けられたこの空間は、シェアオフィスとレンタルスペースとして生まれ変わった。

地域の人の対話の場でもある銭湯を「ご近所のぜいたく空間」として光を当て、ここ数年廃業した銭湯の建物や物品の記録や保存活動をしている文京建築会ユースが改装にかかわった。2016年、同会が目白台の月の湯にあった富士山のペンキ絵やタイル画などの保存場所を探していたとき、地域の美術家ツツミエミコさんを介して倉庫と出合った。ツツミさんと倉庫オーナーの今西和也さんは子どものPTAでつながりがあったご近所同士。今西さんが空き倉庫の活用を考えていることを知って、文京建築会ユースとつないだ。以来、廃業した銭湯や本郷にあった旅館「朝陽館」の物品などの一時保管場所として倉庫は使われてきた。トークイベントが開かれたこともある(過去記事参照)。

この数年、ただ物品を保管するだけでない次の一手を双方で模索してきた。今西さんは「苦節5年。ユースと知り合って4年。改装に1年かけてようやく日の目を見た。石に座って待て、ということ」と笑う。建物は築58年で、かつて1階は印刷工場、2階は写植の作業場だったという。広い部屋と小さい部屋が複数あった。床は木のままで、当時使っていた写植の台なども残されている。

Recycle(リサイクル)ではなく、Upcycle(アップサイクル)。名前の意味について文京建築会ユースの栗生はるかさんは「この5年、老舗の銭湯や旅館がいくつも消え、とにかく残せるものは残さねばと考える暇なく走ってきた。残された物品をリサイクルするのではなく、価値をつけてアップサイクルする、そういう意味で、モノや地域の価値が高まる場になればいいなと思う」と話す。

改装を手掛けた建築家の中村航さんは「天井も壁もボロボロだった。いろんな人が使えるようにオープンなスペースと、みんなが集まれるキッチンを配置した。古い配管やコンセントなどはわざと残している」と話す。キッチンのある広間は「保育園保護者の会とか、町内のごはんパーティーとかに使えますよ」。このほか、10㎡ほどの小部屋が5つあり、シェアオフィスとしての利用者も募集中だ。すでに近所に住んでいるデザイナーらが入居している。

中央が栗生さん、左奥が今西さん

広間の利用料は1時間3千円。地域の人なら割引もあるらしい。Upcycle Salon白山倉庫(白山2-19-9-2F)詳細はFacebookページから問い合わせを。(敬)


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