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音楽で対話、困難に打ち勝つ/「イル・ヴィスキオ」プロの30代弦楽奏者が結成、区内で演奏会

ちいさな子どもたちが鈴やマラカスを鳴らすなか、極上のアンサンブルで「おもちゃのチャチャチャ」が演奏される。「隣のトトロ」では、歌に合わせて子どもたちは自由に通路を歩き回っていた。演奏しているのは、日本を代表するプロの楽団のヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの首席奏者らで結成された弦楽アンサンブル「il vischio(イル・ヴィスキオ)」。発起人で東京フィルハーモニー交響楽団コンサートマスターの依田真宣さんが文京区民であることから、このほど区内の小規模保育園の園児と保護者らを対象にしたミニコンサートが開かれた。

「イル・ヴィスキオ」はイタリア語でヤドリギの意味。ヤドリギは欧米ではクリスマスに飾られるといい、花言葉は「困難に打ち勝つ」。コロナ禍のなか、音での対話を深める室内楽を通して、音楽の大切さを伝え、社会貢献していこうと結成された。メンバーは東京交響楽団コンサートマスターの水谷晃さん、東京フィルハーモニー交響楽団副主席ヴィオラ奏者の加藤大輔さん、日本フィルハーモニー交響楽団ヴィオラ奏者の小中澤基道さん、東京交響楽団首席チェロ奏者の伊藤文嗣さん、新日本フィルハーモニー交響楽団首席チェロ奏者の長谷川彰子さんの6人。全員が30代の中堅奏者だ。

区内のお寺のホールで換気や消毒など感染対策をして開催されたコンサートには、園児や保護者、職員ら約50人の聴衆が集まった。イル・ヴィスキオは都合で代役のメンバーもいたが、まずはモーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」第1楽章で幕開け。演奏者が舞台を降りて聴衆の真ん中でそれぞれの楽器を演奏しながら音色を紹介したあとは、園児の大好きな曲を演奏した。

「はたらくくるま」では、演奏者が消防車やごみ収集車の絵が描かれたお面を頭につけて奏でた。職員の「の、り、も、の、あつまれー、いろんなくるま……」の歌声に合わせ、「郵便車」「清掃車」と歌詞が出てくると、そのお面をつけた演奏者が立ち上がって弾くといった「サービス」も。「散歩」や「パプリカ」など子どもたちも大好きな曲が次々と演奏され、会場はノリノリで盛り上がった。

アンダーソンの「ワルツィングキャット」のような楽しい曲も織り交ぜ、締めはモーツァルトの協奏交響曲より第3楽章。それぞれの楽器の見せ場のある息の合ったアンサンブルに、大人だけでなくちいさな子どもたちもシーンと静まり返って聴き入っていた。

依田さんは「生の音楽をたくさんの人に届けたい」と話す。 2歳の息子と参加した保護者は「飽きるのではないかと心配したが、参加型だったので息子も楽しんでいた。ちゃんと聴けたので驚いた」と話していた。

安全に演奏会ができるようになったら、出張演奏なども検討しているという。演奏動画はFacebookYouTube「Ensemble il vischio」で視聴できる。

問い合わせはメール(Ensemble.il.vischio@gmail.com)で。


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