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牡丹とシイと力士に会いに/望湖山玉林寺

根津駅近くのお寺の庭から谷中方面を眺めると、こんもりとした玉林寺の緑が目に入る。地図でみると台東区は23区の中で一番緑色が占める割合が高い。動物園や上野公園、谷中墓地もあるが、徳川家寛永寺を始めおびただしい数の寺があるからだろう。東京都では台東区が断トツで寺の数は一位、その数339カ寺だ。

3月にあちこちのお寺でいろいろな桜を満喫し、二匹目のドジョウ…ならぬ二匹目(?)の花をさがして取材しようと思っていたら、「谷中のお寺で、それは、それは、みごとな牡丹を観た!」と知り合いからラインが届いた。さっそく、谷中一丁目にある、その、みごとな牡丹のお寺、玉林寺へ。

根津駅から言問通りを上野方面へ徒歩3分ほど登った左手にある。付近一帯が寺の区域で、右も左も後ろも寺また寺だ。玉林寺は天正19年(1591年)に創設されたという。望湖山というくらいなので、江戸時代は高台からは不忍池が見えたに違いない。動物園も見えるのか、大きい鳥なら見えるのではないかな。大木の葉が落ちた冬に確かめに来たい。

本堂へ向かって進んでいくと、右手に八重桜があって、まだ、ピンク花びらが風に舞っている。左手には1980年代に大活躍した大相撲の力士「千代の富士」の銅像と碑があり、このお寺にお墓があるそうだ。テレビの大相撲中継でよく見ていた馴染みのある姿の銅像だ。

さて、牡丹を探しに。本堂の左手奥に井戸があり、その先に中庭につづく門がある。中に入るには許可が必要だ。この日は池の工事中で、危険だから入れないという。「すべって池に落ちたりしないので入れてください」と食い下がって許可をもらい、「みごとな牡丹」にたどり着くことができた。聞いたとおり、大輪の色とりどりの牡丹が池のほとりに座って…いや、咲いていた。

池の周りは小高い山になっている。ずんずん登っていくと、東京都の指定天然記念物の樹齢600年というシイの木があった。かなりの大木で、シイの実がどれほど落ちてくるのか、秋に確かめてみたい。この木に登ったら間違いなく、今でも不忍池は見えると思う。

シイの木はぜひ、千代の富士の銅像とともに、散歩がてら見ることをおすすめ。この日は工事で見られなかったが、防空壕も残っていて、近くの小学校から児童たちが行事として見学にくるという。そちらもぜひ。

さて、もう一つ、他の寺にはないようなことが……。

門を入って少し進んだ右手に、目立たない出口があり、くねくねと細い路地が続く。どこにつながっているのか。左側は近隣のお寺の塀、右側は古い民家、途中、個人宅専用の井戸も。

数分歩き、古びた石段を上がったら、なんと、こんなところへ。

「谷中ヒマラヤ杉」と「みかどパン」の三叉路だった。

谷中4丁目や上野桜木方面から根津駅に出る近道となっているらしく、大勢の人たちが、毎日通勤通学に使う。玉林寺の庭を通って山門から駅へ、山門をくぐって路地を通って自宅へと。あまり見ない景色ではないだろうか。と1人盛り上がった。(稲葉洋子)


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