空模様が怪しく、レーダーでも「12時半には激しい雨となります」と警告が出ていたが、雨雲もなんのその、「養源寺マルシェ」は活況だった。東京メトロ南北線「本駒込」駅にほど近い養源寺(文京区千駄木5-38-1)の境内で6月2日(日)開催された。
「アイランズ」というトリオのライブ、kokopelliによるバイオリン演奏や紙芝居は予定を早めて始まったが、降られずに無事に終了。お店もたたまれることなく続いた。マルシェの活気で雨は近寄れなかったのか。
マルシェの主催は、「みらふぃる」という会で、「動坂テラス」の馬場玲子さんがやっている「Kids マルシェ」との同時開催。さっそく「Kidsマルシェ」の子どもたちの店を覗いてみた。店は本堂の建物の横の通路に並ぶ。大人の出店による駄菓子の店も近くに出された。
8店舗ほど出店していて、子どもたちはシートを敷いて家から持ってきたおもちゃ、服、本などを、ところ狭しと並べている。幼児から高学年の小学生まで、出店する子どもの年齢は様々だ。大人たちは子どもたちの状況に応じて、すぐ近くにいたり、遠くから見守っていたりと、よい雰囲気がただよっていた。子どもは、お店の切り盛りで忙しい最中の様子だが、ひとしきり売れた後、遊びに外出中の子どもたちもいた。
2年生のしょうたろうくんは、「数カードとかウルトラマンのフィギアとか服とか本を出しています」。売れ行きはどう?と聞いたら、しばらく考えて、にっこり。「うーん、楽しいです」と、答えが返ってきた。一緒にお店にいたお母さんは「出店は2回目です。子どもならではの売り方を考えたり、自分で金額を考えたり、いいですね。勉強になり、成長につながる」と、暖かく見守る。
5年生のはなちゃんは、店に座り、ウクレレを奏でている。「使ってたけど使わなくなったものや友達にあずかったものを売っています」。ウクレレも売るのか聞いてみたら、「売りません。お客さんを呼ぶためです」。2回目だけど、今回は結構売れているとのこと。
かのこちゃんにマルシェで大変なところを聞いてみたら、「店番」と答える。ことはちゃんは、「マルシェの楽しい所は、売って買ってもらうのが嬉しい。お金も増えるので」。大変なところは、「『いらっしゃいませー』と声をかけないといけないこと」だそうだ。
「Kidsマルシェ」担当の馬場さんは言う。「お店屋さんごっこから子どもたちは物の大事さと経済の仕組みを学んでいきます。それを大事にしています」。いっぱい遊んだおもちゃやクローゼットで日の光を浴びなくなったおもちゃを使ってもらえ、遊んでくれる子がいる。そこに笑顔が生まれる。自分のお小遣いにもなる。「自分のアイデアでどうしたら売れるかを考えたり、人とのコミュニケーションを育むことができたり、自然にビジネス感覚を養えるようなマルシェにしていきたいという思いで始めました」。子どもたちは、一番に来て動線を考えたり、陳列方法を考えたり、大きな声で呼び込みをしたり、商品説明はもちろん、計算も楽しみながらできるようになるという。「ネット社会になり、どこでも『ポチッ』で買い物ができる時代、人と人を繋ぐコミュニケーションも大事」と思っている。「みらふぃる」との同時開催は今回で2回目だが、「Kidsマルシェ」はそれ以前にも1年の間に3回ほど開いてきた。
「みらふぃる」代表の今川智広さんは、「『養源寺マルシェ』のテーマは、「身体に良いものや心に良いものをたくさん集め、リラックスしてあらゆる世代が集い、やさしくおだやかな時間を共有し、楽しみ、憩うこと」だという。
出店内容は、素敵なバッグや雑貨、ドライフラワー、リサイクル着物、おいしい紅茶にジャム、野菜、駄菓子、マッサージ、ヨガ、ワークショップ、パフォーマンスなど。オムライスのキッチンカーも。当初、32出店の予定だったが、お天気が悪そうなこともあり、当日は22店舗の出店だった。
台東区谷中の三崎坂の途中に店があるエイジングフラワーカフェ「Lecoin」(ル コワン)は、今回初めての出店。エイジングフラワーはドライフラワーのこと。「全部、自家製のドライフラワーで色持ちもします。お子さんが手に取りやすかったり、ちょっとしたプレゼントに適したものを売っていて、値段も手ごろなので、お子さんが買って行ってくれたり、ちょこちょこ売れています」と笑顔で話す。
親子の店、「こどもに優しい屋」さんの出店は、「自然食品や添加物の入っていない食品を通して、体と心のケアを提案しているお店」だという。東洋医学の気を整えるセラピーの体験もある。「食品を売るというより、提案させていただいています」。9歳のダウン症のお嬢さんは、ヒーラーとして活躍、去年からは仕事として親子で取り組んでいる。
今川さんによると、養源寺マルシェは、こどもが幼稚園の時からのママ友のつながりがきっかけに始まって、その後「みらふぃる」がバトンを受け取り運営を引き継いだという。「みらふぃる」主催では2回目。今川さんは、幼稚園のママ友ではなかったが、養源寺でヨガをやっていた。
ママ友の輪とヨガ友の輪がつながっていて、どちらにしても、地域でできた仲間たちだ。「マルシェは、40年來の繋がりが紡がれてきた結実なのです」。「みらふぃる」が引き継ぐ前にも「養源寺マルシェ」は地域の仲間で、6回開かれてきたという。「私がいろいろなイベントを開催していることを知って、人を集められるのではと、主催を頼まれたのかな」と笑う。
今川さんは「さらに多くの人に体に良い物や心に良い物を通して、繋がりをつむぎ、ゆったりと楽しんでいただけるマルシェにしていきたい」と話していた。(稲葉洋子)