Close

東洋学園大学の屋上でホップを栽培、クラフトビールの原料に/しのばずホッププロジェクト、文京区でも始動

屋上や壁面などの空きスペースでホップを栽培し、クラフトビールをつくり、まちをつくる。そんな「しのばずホッププロジェクト」が文京区にも波及し、始動した。5月7日、文京区本郷の東洋学園大学屋上で、ホップの植え付け会があった。

「まずは枝をコンテナの三分の一ぐらい敷き詰め、そのあと落ち葉も三分の一ぐらい入れてください」。説明のあと、参加者が足でバキバキ枝を折ったり、コンテナの上に乗ったりして枝を敷き詰めていく。この日は東洋学園大学の屋上に、プロジェクトメンバーや学生ら約30人が集まり、6個のコンテナにホップの株を植え付けた。ホップはビールの苦味の原料となる。群馬県みなかみ町の農園から分けてもらった「カスケード」種を株分けしたものだという。

永野さん(右)と野村さん

しのばずホッププロジェクトは、コロナ禍の2021年、池之端仲町商店会などの商店会と、東京大学大学院都市デザイン研究室や地元企業が連携し、不忍池近くのビル屋上でホップを栽培、秋に収穫したホップを「シノバズブルワリーひつじあいす」に持ち込んでオリジナルビール「不忍エールエール」を醸造したことが始まりだ。2023年からは地元産ホップ100%のビールが毎秋醸造・提供されている。地産地消ビールは、路上ビアフェスやブックカフェイベントなどのまちづくり活動にもつながっている。

プロジェクトのホップ栽培は徐々に広がり、御徒町の多慶屋の壁面や、松坂屋上野店屋上などでも栽培が始まった。そんな折、しのばずホッププロジェクトを引っ張る東京大学都市デザイン研究室助教の永野真義さんが、本郷菊坂町かもすのマスターに、松坂屋屋上で収穫したホップを使わないかと話をもちかけ、かもすでは2025年秋に「しのばず屋上日和」を醸造した。同時期にかもすのマスターは東洋学園大学現代経営学部准教授の野村拓也さんと知り合い、ホッププロジェクトにつながったという。

壱岐坂の途中にあり、モザイク画が目を引く東洋学園大学

東洋学園大学の屋上は2023年にリニューアル。野村さんはその活用を手がけている。もともと植えられていたローズマリーの活用を手始めに、オイルを抽出してキャンドルを作ったり、サシェにしたりして、昨年秋の文京博覧会にも出展した。今年3月には宮城のワイナリーからブドウの苗を分けてもらい、ワインづくりに取り掛かろうとしているところだ。そこへホップ栽培の話が舞い込んだ。

東洋学園大学のモザイク画を模し、かもすのマスターが作ったステッカー

野村さんの専門はマーケティング。商品の売り方や売れるしくみづくりを考えるのが仕事だが、これからの社会を生きる学生には、マーケティングのスキルを使いたいと思う「魅力的な活動や商品を見つける能力」の方が大事なのではないか、と考えた。そのためには、ものをつくるところから、できあがりを売り物にするまでの苦労を知ることも必要だ。野村さんは「実践的学びと、これからの都市のあり方の提案、この2つを掛け合わせたい」という。都市と地方、緑、食、ライフスタイルもまた、マーケティングの重要な要素だ。

都心の屋上での栽培は、ビル風や日当たり、酷暑など様々な条件があるので、ブドウもホップも手探りだ。「文京区で育つホップはこういう特色があるから、こう盛り上げよう、と言っていくためにも、ホップをおいしくしていくための栽培方法も考えたいですね」

6つのコンテナは屋上を囲う壁の一面に置かれた。この日、土に混ぜられたのは、ローカルフードサイクリングの協力のもと、台東区で作られたコンポストたい肥だ。自動潅水装置をつけ、野村さんや学生がブドウとホップを毎日のように見て回るという。「屋上での栽培は、屋上緑化や屋上の活用の観点、温暖化や人口減少といった課題を先取りした場になりうると思います」と野村さん。

しのばずホッププロジェクトには様々な立場からかかわる人が増えており、プロジェクト参加者は100人を越え、協力ブルワリーも4カ所になった。今後はブルワリーでの懇親会や見学ツアー、オリジナルグッズの製作なども検討しているという。永野さんは「台東区も文京区も農地ゼロのまちですが、ホップは比較的育てやすい植物で育てがいもあり、園芸に慣れない都心の人も関わりやすい植物です。ホップのグリーンカーテンがまちじゅうに広がり、地元産のビールを年中飲めるようになるといいですよね」と話していた。(敬)

Copyrights © 2007-2015 JIBUN. All rights reserved.
error: 右クリックはできません。