ご存知ですか?生活支援員。
生活支援員は、判断能力が十分でない高齢の方や障害のある方などを対象に、福祉サービスの利用援助や日常的金銭管理などのサポートを行う人のこと。そういった制度があることを知っている人はいるだろうか 。
人口統計資料を見ると、文京区の人口は220,009人(平成30年9月1日現在)とある。
では、文京区内に生活支援員は何人いるのだろうか。
答えは19人。
現在、文京区では19人の生活支援員が活動している。その中の一人。生活支援員を務めて3年の、野村さんに話を伺った。
一緒に役所の手続き、時には話し相手にも
--生活支援の活動内容を教えてください。
「福祉サービスの利用援助手続きや日常的金銭管理などを行っています。具体的には、一緒に役所の手続きを行ったり、郵便物や請求書を確認したり、金融機関での手続きのサポートをしたりしています。話し相手にもなりますね。会話を通して不安に思っていることを聞き取ります。活動した内容については、社会福祉協議会(以下、社協)の職員(専門員)と共有し、利用者さんの今後の支援計画の作成に反映してもらっています」
ーー社協の方も一緒に活動するのですね?
「はい。社協の職員(専門員)には常に報告や情報共有をしています。職員(専門員)が支援計画を作成する役割、支援員は計画をもとに実際の支援を行います。専門員は私以外にも何人かの生活支援員をサポートしています。生活支援員が一人で判断できないことが起きたときは、職員に連絡を取り指示を仰ぎます」
ーー野村さんは、何人の方を担当しているのでしょうか?
「今は1人です。私はフルタイムで働きながらなので、休みを上手く使いながら活動しています。生活支援員によっては1人で3~5人ほど支援している方もいらっしゃいます」
ーー月に何回くらい活動しているのでしょうか?
「月に1回、利用者のご自宅へ伺っています。日にちは決まっていませんが、お互いに都合の良い日を決めて伺います」

ーー支援をする方は、どのように決まるのでしょうか。
「生活支援員登録時に希望を出します。例えば、月に何回活動できるか、場所、時間帯、経験などを伝え、希望に合う人を紹介してもらいます」
ーー未経験でも始められますか?
「研修が充実しているので大丈夫です。東京都やエリアごとの研修があります。研修は定期的に行われ、交流会もあります。交流会では、支援員同士が情報交換を行います」
ーー生活支援員は、どのような方が多いのでしょうか?
「いろいろですね。福祉の仕事をやっていた人や、医療関係に就いていた人もいらっしゃいますし、まったく無関係の仕事をしていた人もいます。私の印象では、他のボランティア活動にくらべ男性の方が多いです。事務的な手続きが意外と多いので、会社員を経験されていた人はやりやすいのかもしれません」
視野が広がり、ご縁ができる

ーーなぜ、生活支援員になられたのでしょうか?
「家族の介護が終わって、認知症カフェを始めて、その活動の中で社協の職員と知り合ったことがきっかけです。生活支援員の活動を紹介していただき、やってみようと思いました」
ーー生活支援員は社協職員からの紹介がないとできないのでしょうか?
「文京区は公募をしていないので、紹介から始める人が多いです。もちろん、ご興味のある方はご自身で社協の「あんしんサポート文京」(権利擁護センター※連絡先は下記参照)に問い合わせて始めることもできます。最初に面接を受け、何回か研修を受けて活動を始めます」
ーー生活支援員になってよかったことは?
「視野が広がることです。私が支援している人は戦争を経験されており、当時の体験を伺えます。文献では得られないリアルな話はとても貴重です。また、生活支援員同士のコミュニティもあります。支援を通して、普段の生活では知り合えない人と縁ができるので、なってよかったと思います」
ーー報酬はあるのでしょうか?
「あります。ご自宅に伺い、支援を行ってから社協に戻り報告書を書くところまでが生活支援員の活動で、報酬の対象の時間です。報告書を書くところまで、時給が発生しています。後は、実費で交通費もいただいています」
ーー支援員は無償のボランティア活動ではないのですね。
「そのように思っている人も多いですね。実際には活動した分の時給をいただいています。ただ、月に1~2回の活動なので、「仕事」のような収入にはなりませんが」
未経験でも研修充実
ーーこれから生活支援員になる人へメッセージ
「生活支援員として活動することに、不安を感じている人も多いと思います。でも、研修制度がしっかりしていますし、社協の職員さんが手厚くバックアップしてくれます。分からないことがあっても、電話ですぐに答えてもらえるので安心です。身体の介助や家事はやってはいけない規則なので、介護経験がなくても、料理ができなくても大丈夫です。短い時間から何か新しいことを始めたいという人は、生活支援員を始めてみてはどうでしょうか」
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インタビューに答えていただいた野村さんは、フルタイムで働きながら、生活支援員も務めるエネルギッシュな方。他にも福祉施設で定期的に認知症カフェを開くといった活動もされている。
支援するわずかな時間で利用者の細かな変化を読み取り、フォローする能力も必要となるし、責任だって重い。コミュニケーション能力も必要だ。決して、気楽な気持ちで務まる活動ではないと思う。
普段の生活からは得られないことを体験でき、生活支援員の活動を通してコミュニティが広がるのも事実。超高齢社会を迎えた日本で、必要とされるのは間違いないだろう。生活支援員をやってみたい、新しいことをはじめてみたい人は下記へ問い合わせてみてほしい。(石井)
あんしんサポート文京(権利擁護センター)03-3812-3156