小石川三丁目の「さきちゃんち」にて10月10日、育児情報誌「miku」の編集長でありNPO法人児童虐待防止全国ネットワーク理事でもある高祖常子さんによる「たたかないどならない子育て講座」が開かれた。参加者は親子16組、そのうち6組が夫婦で参加した。
まずは4、5人でグループになり、互いに自己紹介。高祖さんが特に話して欲しいと望んでいたのは「お子さんのいいところ」。 たまに「ない」と言ってしまう人もいるそうだ。
次に「しつけ」と「虐待」の違いについて話は進められた。児童虐待相談対応件数は年々増えているが、児童相談所全国共通ダイヤル189(イチハヤク)への認知はまだ薄い。また、虐待を疑われて傷ついたという親の声を聞くが、児童相談所は親を取り締まるのではなく、育児をサポートする場所。「アドバイスなども受けられるのでうまく活用して欲しい」と高祖さん。
しつけと虐待は違う。 子どもが耐え難い苦痛を感じれば、それは虐待にあたる。 あくまでも受ける側にたつこと。 高祖さんによれば、特に父親から「自分はたたかれて育ってきた。でも今はまともに育っている」と反論されるそうだ。しかし、親自身がそう育ってきたとしても、親と子どもは違う。高祖さんは、子どもの側にたって判断することを強調していた。
子どもをたたいている親は約7割、親からたたかれていた人は約8割。しかし、44%は「たたくしつけ」に迷いを感じている。 祖母や夫に「厳しくしつけろ」と言われて止むを得ずたたく母親もいるという。
日本では子どもの自己肯定感が他先進国に比べて低いという調査結果がある。親から子への虐待だけでなく、教師からの暴力、子ども同士のいじめ問題、考えを表現したり、それぞれの考えを尊重したりする風土がない、自分自身の存在を認められる安心安全な基地が少ないという状況が、子どもが生きにくい背景にあると考えられる。
一方、子どもへの体罰・暴力を法律で禁止している国は世界46カ国ある。 高祖さんが実際に取材したスウェーデンでは35年以上前に体罰禁止法が制定された。それまでは棒でたたくなどの体罰は日常的な風景だったという。
グループワークでは、「あなたの子はおもちゃを取ってトラブルを起こしてばかり。子育てひろばから足が遠のいたものの、久しぶりにがんばって行ってみると、さっそくおもちゃを独り占め、取り合いになり友達を押す。貸してあげなさいと言ってもヤダと騒ぐ・・・」という育児中によくある困った場面の事例から、自分ならどうするかを話し合った。「いますぐ~してほしい」という短期目標での子どもへの対応と、子どもに「こんな大人になって欲しい」という長期目標を見据えた上での対応とでは随分変わることを、参加者は体感できたようだ。
「しつけ」の最終目標は「子どもが自分で決めて行動すること」。しつけのために「たたかない」と決めることが大切だというお話で締めくくられた。
(上田麻理子)