ぐりとぐら、だるまちゃん、ぞうくん、そらまめくん、せんたくかあちゃん、ぐるんぱ、マトリョーシカちゃん・・・子どものころ、あるいは親となって読んだ絵本でこれらを知っている人は多いのでは? すべて、福音館書店(文京区)の月刊物語絵本「こどものとも」から生まれた。60年間で720冊。親から子へと読み継がれてきた歴史を体感できる「こどものとも」創刊60周年記念フェスタが、豊島区西巣鴨のにしすがも創造舎で開かれている。前期は4月5日まで、後期は4月28日から5月1日まで。4月3日(日)は「だるまちゃん音頭」を踊るスペシャルイベントが予定されている。
こどものともは1956年に創刊。元「こどものとも」編集長・川崎康男さん(現取締役編集担当)の解説文によれば、名作のダイジェストが主流だった時代に、創作絵本を月間で発行するのは画期的なことだったという。絵も童画でなく、様々なジャンルから、物語にふさわしい新しい描き手を発掘したそうだ。70年代の絵本ブームの下地をつくり、絵本作家が育つ土壌をつくったともいえよう。60周年のキャッチフレーズは「いつもかわらず いつもあたらしく こどものそばに」
「たとえば『ぐりとぐら』なら、子どもも、その父母も、祖父母も知っている場合があり、3世代で会話が成立します。物語だけでなく、読んでもらったときの記憶もよみがえるのが絵本の特徴だともいえます」と、広報宣伝部の担当者は言う。67年に登場した「だるまちゃんとてんぐちゃん」はシリーズ化して2014年にも新作が出るなど、作者も描き続けるロングセラーもある。一方で、2011年に発行された「ひともじえほん」は、ダンスカンパニー「コンドルズ」を主宰する近藤良平さん作の写真絵本というように、新たな挑戦は21世紀に入っても続いている。
フェスタは、社員の発案から始まったという。50周年記念は書店フェアや講演会が中心だったが、60周年を迎えるにあたり、「単発イベントではなく、期間を取って、地域の人に来てもらえて、絵本の良さを再発見できる場所を作れないか」という声が上がったそうだ。絵本そのものが日常づかいのものなので、その延長線でできるといいね、と。会場に授乳室を設ける案も、子どもが小さい社員から出された。フェスタ期間中のスタッフも、社員がシフトを組んで入っている。
会場には、2つの絵本の部屋があるだけ。それでも平日は200人近くの親子連れが押し掛けるほど人気だ。キッズルームに入ると、創刊から最新号まで720冊の「こどものとも」がずらり。祖父母世代までもが懐かしがって読みふける場合もあるそうだ。また、ハードカバーになっている人気作品も手に取って読めるため、親子があちこちで絵本を広げている。片隅にはぬり絵コーナー。そして人気なのが、撮影コーナー。ぐりとぐらに出てくる「たまごの車」に乗って撮影したり、かわいい衣装をまとってマトリョーシカちゃんに変身したり。
もう一つの部屋はベビールームで、授乳やおむつ交換に使う部屋だが、13時と15時に絵本の読み聞かせ会がある。一般財団法人出版文化産業振興財団(JPIC)のメンバーが、手遊びや歌を交えながら、読み聞かせをしてくれる。会場全体では、ぐりとぐらにまつわるクイズラリーもある。
特別イベントも企画されており、4月3日13時からは、まるごと1日「だるまちゃん」デー。手作りうちわをつくって、加古里子さんの書き下ろしのだるまちゃん音頭をみんなで踊るという。
フェスタの詳細はホームページで。