谷中→松本、お次はどこへ?自由人の喫茶ヤマベボッサ

昨年秋(2016年10月)、上野の美術館から千駄木への帰り道、上野桜木の喫茶「谷中ボッサ」に立ち寄った。その時、「谷中ボッサ」が松本に移転することを知った。
ボッサの増田さんご夫婦とは、向丘、光源寺の「千成ほおずき市」出店者同士のつきあい。ほおずき市では、毎年300円のおいしい珈琲を出してくれていて楽しみにしていた。上野桜木を通りかかるときは、たまにお店に寄っていた。店内はボサノバが流れ、珈琲&手作りケーキやランチは最高だ。店はこじんまりとしているが、絵画やアクセサリー、服などいろいろな展示をやっていた。必ず作家さんもいて、似顔絵を描いてもらったこともあった。
「引っ越しですか!」この道を通るときに「ボッサ」がない景色が目に浮かんで寂しい。次の瞬間、松本にこの店があるのを想像するとなんだか楽しい。
この3月に2日続きの雪が残る松本市里山辺に「ヤマベボッサ」を訪ねた。増田知巳さん、詩絵さんご夫婦にお話を伺う。
夫の知巳さんは、学生時代に白骨温泉で住み込みバイトをしたとき、松本を経由していたそうだ。その頃から気になってはいたが、7~8年前再訪したときに、民芸・クラフト・湧き水・そば・道祖神・アルプスの山並み・温泉などと出会い、ご夫婦揃ってすっかり虜になってしまった。もともとブラジル好きで、ブラジルとも共通点が多いと思っている。「こじつけかも」と詩絵さんは笑う。
松本でも、里山辺は、これらの要素が凝縮されている地域だ。すべてが徒歩圏内、地場野菜を売る八百屋さんも直近だそうだ。ちなみに、かのプロサッカーチーム「松本山雅」の練習場もすぐ近くにある。
松本駅からバスで15分くらい、「松本民芸館前」で降りると道の向かい側に「ヤマベボッサ」はある。まわりは葡萄畑で店は普通の民家だ。玄関に入ると、販売品の置き場。靴を脱いで上がるとレジ。その横に続くキッチン、手前の階段をあがると2階に2間の客室がある。
畳にちゃぶ台が2つ、壁面には本や物入れ、ランタン、CDやビデオなど。いろいろなストーブもおもしろい。ベランダに出るには窓の枠をまたぐ。家々の屋根越しに雪をかぶった北アルプス山脈がそびえ、中でもとがった三角の常念岳がひときわ目立つ。
谷中と松本、基本的に店の営業形態は変わらないが、松本に移転してから新たに手がけたことは、イベントの出店、珈琲の焙煎、テイクアウトメニューの充実、野良しごと。そしてソーラー発電、ソーラー給油、湧き水、薪ストーブなど自然の恵みを活用した、ケチ(?)インフラの充実。また、店舗の修繕の折は”DO IT YOURSELF<DIY> ”に熱中する。
松本に移転してよかったことをあげていただくと、「毎朝ベランダから北アルプスの絶景が眺められること」「美ヶ原、浅間、扉などの温泉に行き放題、家の風呂を使う必要がない」「晴れた日が多くて、梅雨がないので外出が楽で楽しい」「日帰りで山登りやスキーができる」「子どもの喘息がピタリととまった」「子どもの集中力が高まった」・・・ずらりとあがった。不利な点は「乾燥した気候への順応は大変、日差しが強いので対策しないといけない」ことくらい。
「谷中時代のお客さんも松本観光を兼ねて毎月のようにいらしてくださいます」と詩絵さんはいう。「谷中時代に、美しい町とそこに行き交うみなさんと濃密なつながりを持てたのは貴重な財産でした」
それでも松本に移転した。「月々の家賃は20万円以上、しがない飲食店主には重荷でしたね」。ならば大好きな松本へと。
この先、里山辺に、松本民芸館、おとぼけ美術館(信州創作土産の美術館)、ヤマベボッサという3つの拠点をむすんだ観光のトライアングルを作り、宣伝していきたいという。
10年後はどんな風になっていたいですか?
「山側での暮らしを充実させたら、次は浜辺ボッサとかポルトガルボッサとかやってみたいなぁ。私は茅ヶ崎出身なんで、海も好きなんです」と知巳さんはいう。
一つの土地に固執しないで、移り住んだ土地を大事に、そこにいる人たちと楽しく生きる。でも決してそこにへばりつかず、次の土地でも楽しい暮らしを紡ぎ出す。その生き方に共感。
みなさま、今、「ヤマベボッサ」が中央線1本で行かれるうちに、ぜひ、訪ねてみてください。自家焙煎コーヒー、パン、ケーキ、お食事などなどおいしい食べ物をこさえて、自称やりたがり夫婦の増田知巳、詩絵さんそしてお嬢さんの出水さん家族全員でお待ちしているとのことです。オーガニックや無農薬の食材を中心に、安心・安全にも最大限の配慮をしております。(稲葉洋子)
〒390-0221
長野県松本市里山辺1610-10
0263-55-6442