まちは物語の詰まった文庫本/その「目録」を取材ワークショップで作った「国立文庫」発行

国立文庫イベント全景

まちは「文庫」なのかもしれない。ある人があるとき思い立ち、まちの物語をまちの人と取材した。そしてまとめたのは、物語そのものではなく、文庫目録だった――。国立市で6月29日、取材ワークショップを通じてまちの物語のあらすじだけをすくいあげた「国立文庫」の発行記念イベントが開かれた。

国立文庫タテ2

その名の通り、一見、文庫本だが、中身はタイトルと4、5行のあらすじだけの「目録」だ。「文庫目録は、物語や人に対する想像がわき、本を手に取りたいと思わせるでしょう。それと同じで、この本を片手に、興味のわく場所を訪ねて物語を想像したり、実際に話を聞いてみてほしい」と、国立文庫編集室の木村健世さん。

昨年秋から4回、取材ワークショップを開き、約30人が参加した。記者の腕章をし、2、3人が一組になってまちに飛び出し、行き当たりばったり、「直感で」選んだ店に突入。まちの物語を集め、発表しあった。のちに編集部が物語のエッセンスを短く、文庫目録風にまとめた。「見慣れたまちを、新鮮に、楽しく経験し、再注目することで愛着が持てる。まちづくりの一歩手前の行為というべきでしょうか」。47カ所の物語の「さわり」が、地図と共に収められている。

イベントではミニトークのほか、グループに分かれ、お気に入りの物語をピックアップして朗読し、その場所を取材した人が質問に答えるコーナーも。たとえば――

「恋のスパイス いんでぃ庵」

二人の男女はいつもこの店を待ち合わせ場所に選んでいた。・・・またいつものように男がやってきて席に座る。しかしその日、女はついに現れなかった――。店主の胸に沸き立つ不安。寡黙に常連客を見守る店主のあたたかい記憶。果たして二人の恋の行方は。

「この2人はどうなったのですか?」との質問に、「それは、お店を訪ねて店主に尋ねてください」と、取材者。結局、結末を含めさまざまなエピソードが披露された。

国立文庫中身

「パブリックアーティスト」の肩書を持つ木村さんは、これまで、この「まちの文庫目録」を赤坂や墨田区の3カ所で手がけた。国立文庫は5月25日に千部発行し、無料配布しているが、もうすぐなくなりそうな勢い。「空気みたいに、まちにばらまかれるようなビジョン。これはアートだと思っています」

国立文庫イベント

関連サイト

国立文庫

http://kunitachihonten.info/