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こんなところに?日本一ハードルの低いレコード屋って?

根津駅2番出口から徒歩1分といったところだろうか。住民しか行きそうにないコンビニ脇の路地を入ると・・・

庭木がボウボウと生い茂る普通の住宅の玄関がなにやら普通でない。

小さく「block」と書かれた玄関に踏み込むと、普通じゃない世界の入口に思える。

階段を上って3階へ行くと、コンクリート打ちっぱなしの空間が広がる。壁面の1つには、レコードジャケットが飾られ、プレーヤーやスピーカーなどが並ぶ。反対側の壁にはスクリーンやプロジェクターもあり、いったいここは何だろう? と、棚に飾られたビクターのワンちゃんみたいに首をかしげてしまう。

「イベント会場としても使われているけれど、レコード屋です。レコード初心者でも入りやすい、日本一ハードルの低いレコード屋をめざしています」と、店長の鈴木宏明さんは言う。聞けば鈴木さん、堅実な会社に勤めていたのに、何も決めないまま2017年2月に脱サラしちゃったという。退職と同時に自分が住むために友人と借りた家の2階、3階を活用したいと思い、「学生のときから好きだったレコードを売る店をやろう」と一念発起したそうだ。

夏には改装費用をまかなうためクラウドファンディングで資金を集めた。若い建築家や学生らの協力で改装を進め、11月にオープン。2階は自分たちが住む部屋以外のキッチンなどを改装して開放。3階は貸しスペースという風変わりなレコード店が誕生した。

影響を受けた本がある。「ファンクはつらいよ」。アメリカの黒人ミュージシャン、ジョージ・クリントンの自伝だ。もともとは理髪師だったことから、髪を切るセッションなどもやってきたそうだ。そこには音楽に関係ない人も、理髪に関係ない人も集まる。「運営者のキャラによって、普段出会わないような人が出会うということが起こり得るんだ」と思ったのが、レコード店と貸しスペースの組み合わせにつながった。

学生が勉強会を開いたり、NPO法人が会議に使ったり、大学の先生がゼミに使ったり。キッチンがあるから、料理のイベントもある。広めのベランダからはタワーマンションが望める。「自分が何かおぜん立てするのではなく、やりたいことを持つ人が、やりたいことの実現のための場として使ってほしい」

blockという名前は、1970年代のニューヨーク・サウスブロンクスで開かれていたblock party(ブロック・パーティー)にちなんだもの。お金のない黒人が公園など野外のブロック(区画)に集まってきて、ラップをする人、ダンスをする人が現れて、それがヒップホップ誕生につながっていった。「何かが始まる場所になってほしい」

ねらい通り、週に多いときは100人もの人が集う場となった。いろんな分野で活躍する若い人のネットワークができた。故郷の長野県とのつながりもでき、若い世代向けの移住関連イベントを開いたり、リノベーションでまちおこしを企画している下諏訪町のお手伝いをしたり。今やっていることを一言で表せば「空間設計を地方で受け持つレコード屋」だそうだ。新たな拠点も設けたいと、ひそかな野心を燃やしている。

問い合わせはblock 日本一ハードルの低いレコード屋Facebookページの「メッセージ」で。


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