この夏、私は夏らしいことなんて何一つ出来なかった。花火、海やプールにも行かず、スイカすら食べない。そんな夏であった。
「高校生活最後の夏」という一生に一度の境遇、そしてなんとなく青春ドラマを思わせる響きは私の生活とは全く無縁であったが、だからと言って私は家に居座っていた訳ではない。
全国高校教育模擬国連大会に出場し、最優秀賞を受賞したり。大学への出願資料作成に勤しんだり。政治系のイベントを運営したり。時には友人と映画鑑賞をしたり。一人でギターや読書、坂めぐりといった趣味に没頭したり。
とにかく「退屈」を感じる事は一度もなかった。
せっかくの休暇ではあったけれど、誰よりも多忙な毎日を送る事ができ、それが何よりも幸せだった。それが私の高校最後の夏だったのだ。
SNSで流れてくる友人たちが夏休みを謳歌している様子に羨望の思いを抱いたりもした。
想像していた夏では全く違った。
だけど私は何よりもかけがえのない経験を積む事が出来た。
何かに熱中できる事、それは非常に尊く価値のあるものなのだと再確認できたのだ。
いよいよ学校が始まる。高校生活もいよいよ終盤に差し掛かってきた。限られた時間を悔いなく過ごしたい。(吉田遼)
※文京区内の高校に通う吉田遼さんが、若い世代の思いや悩みをつづります。