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都市と地方をつなぐオフラインの場、20歳学生が起業しオープン/向丘のカフェ&コワーキング「Rural Coffee」

産直野菜があり、コーヒーチケットのガチャがあり、手作りクッキーがあり、コーヒーがある。東大前の本郷通りと、ほぼ平行して走る国道の間、向丘の住宅街を抜ける狭い路地に、突如現れる赤レンガの古民家。2020年3月にオープンしたカフェ&コワーキング「Rural Coffee」だ。

運営するのは、起業と学業の二足のわらじをはく20歳の大学3年生、坪田莉來(つぼたりく)さん。株式会社Rural frontier代表取締役CEOだ。昨年19歳で会社を設立し、今春店舗を開いた。「一杯のコーヒーでつながる都市と地方、がコンセプトです」と言う。

原点は故郷の愛媛県内子町で過ごした中高生時代。人口1万6千人、古い町並みや自然を観光資源にしている小さな町を一歩も出たことがなく、将来の生き方を考えたとき、「組織に属するより自分で何かをやりたい」と思った。起業するなら経済か経営を学ぼうと考えていたが、進路を決める高3の夏、学校の先生から提案されたのは福祉系の学部の推薦。まちづくりや地方創生について学べると知り、地域課題をビジネスで盛り上げることができないかという考え、東京の大学に進学した。

地方と都市をつなぐローカルメディア運営会社や、愛媛県のアンテナショップでアルバイトした。地域の情報を発信する仕事は楽しかったが、どれだけの人が読んだかのデータはあっても、どれだけの人が行動したかまではネットでは見えない。「たとえば観光案内の記事を読んだとして、実際に行くかどうかはわからない。やっぱりオフラインでの人と人とのコミュニケーションが一番伝わるのではと考えた」

内子町に帰省したとき、いろんな人を訪ねて、東京で特産品を売らせてほしいと交渉した。会社を設立し、仲間と共に2019年、内子町の農産物を中心にしたマルシェ方式の移動販売を開始。「でも、移動販売では固定客がつかなくて、良さを伝えきれていないのではという疑問がわいた」

そこで、「オフラインの場」を構えたいと考えたそうだ。「ヒトやモノが動けば、コトが起きる。きっかけになる場として、まずコワーキングスペースの設置を考えた」。大学がある八王子や小金井、横浜も検討したが、縁あって今の場所を活用したいと考えていた不動産業者と出会い、共同事業として取り組むことになった。「つながりのないところに飛び込んで、あれやりたい、これやりたいと言う学生をかまってくれる大人がいてくれた。アルバイトした会社にもお世話になった」という。

コワーキングスペースが出発点だったが、「せっかくの住宅地だし地域にひらけたら」と、コーヒースタンドと産直品の店、というのが加わった。元中華料理店だった店舗の改装は不動産業者が手掛け、運営は坪田さんが担う。ちなみに2階は坪田さんの住居兼事務所だ。

「東京にも農家があるんだ。もったいない」と、調布の農家と契約し、野菜を仕入れている。コーヒー豆は、北海道、山口、愛媛など地方のロースターから仕入れている。富山県南砺市利賀村で活動している学生の団体と連携した商品の販売もしており、能登や門司港といった地方のPR企画事業も手掛けている。資金が尽きかけて夜勤のバイトをしたこともあるといい、つい心配になるが、坪田さんは「厳しいのは承知でスタートしている。あまりリスクとか、うまくいかなかったらとか、考えないタイプ。こんな場所があったらいいかな、という思いが先に走るので」と笑う。「好きの延長線上でやっています」

コロナの影響でやりたいことがやりきれていないが、「リアルにこだわっていきたい」という。「せっかくのご縁で向丘にいるので、おもしろいことを仕掛けられたら」。周辺のマップづくりなどもやりたいという。店舗スペースから一段上がった奥はカフェスペースとコワーキングスペースがあり、スペース貸しもしている。コーヒーのテイクアウトも可能だ。(敬)

 


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