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楽しくポップに銭湯山車が行く/廃業銭湯の物品で再構成、良さを祭りで語り継ぐ

唐破風(からはふ)の屋根に、番台。側面はタイル張りに鏡やカラン、シャワーヘッドが備え付けられた洗い場。ご丁寧にケロリンの湯桶やプラスチックの風呂椅子まである! 建築家・栗生はるかさんが代表を務める文京建築会ユース有志と彫刻家らのチームが生み出した「銭湯山車(せんとうだし)」。廃業した銭湯から譲り受けた物品を組み合わせ、お祭りの主役、山車として再構成した。メンバーの三文字昌也さんは「お祭りはまちを再発見する場でもある。祭りのノリで銭湯の良さを楽しくわかってもらえたら」と話す。

国際芸術祭「東京ビエンナーレ2020/2021」のアートプロジェクトの一環として制作した。コロナ禍で対面のイベントが一部できなくなってしまったが、東京のまちを巡行し、オンライントークなどを開催し、ユーチューブで配信する。22日まで根津の不忍通りふれあい館に展示され、27日は文京シビックセンターまで巡行。28日から31日まで1階のギャラリーシビックで展示される。

                           撮影・大久保勝仁

7月と8月の巡行では鶯谷から秋葉原、秋葉原から根津へと銭湯山車を引いてまちを練り歩いた。現役の銭湯の前や、銭湯跡地も通った。ルートは非公開だが、偶然道端にいた人や、銭湯から出てきた人などが、「なんだろう」「お祭りだ」とついて来たという。「銭湯のおかみさんも喜んでくれた。みなさん気になって面白がってくれた。楽しさが伝わる体験だった」と三文字さん。

東京の銭湯はものすごい勢いで廃業している。文京区内でもこの10年でほぼ半数が廃業し、いまや5軒に。文京建築会ユースでは、廃業するたびに記録を残し、物品の保存活動をしてきた(過去記事参照)。東京最古級の木造銭湯だった目白台の月の湯や明治中期創業だった本郷の菊水湯で見られるように、東京の銭湯の建築様式として特徴的な宮造りや唐破風の屋根など、建築的な意義もある。しかし、都市デザイナーの三文字さんは「銭湯は、人が集まって語り合ったり、見守りの機能もある地域の拠点。銭湯がなくなって、行くところをなくした人もいる。人の動きがみえる鏡のような存在としても貴重」と話す。

タイルや富士山のペンキ絵など、美術館などに引き取られた物もあるが、物品を保管する倉庫も容量に限りがある。銭湯の価値をいろんな人に見てもらい、わかってもらうにはどうしたらよいか。メンバーで知恵を絞って生まれたのが銭湯山車だった。「みんなお祭り好きのメンバーだったんで」

建築家の内海皓平さんが全体を設計し、細部はみんなで検討していった。菊水湯の大黒柱をそのまま銭湯山車の大黒柱として使っており、兎の毛通しと呼ばれる唐破風の下の彫り物もその大黒柱から彫り出している。彫刻家の村田勇気さんが腕を振るい、鶴をモチーフにした兎の毛通しを制作した。さらに上の千鳥破風の下にはシャワーヘッドが彫られた。動かすこともできるそうだ。

正面下部は月の湯の傘入れや靴入れ。中央には月の湯の風呂桶の栓が「ご神体のように」飾られている。銭湯でおなじみの富士山のペンキ絵は、菊水湯に実際に描かれていたものの頂上付近を原寸大で再現。「本物の大きさがわかると思います」。天井部は実際の銭湯同様、ゆるやかなカーブがあり、湯気抜きの窓がある。

そして、のれんや柱、鏡には、銭湯さながらの協賛広告が。番台にも上れる。遊び心満載なので、細部を観察すればするほどおもしろい。

実は側面の洗い場についているシャワーヘッドからは、本当に水を出すことができる。イベントで活用したかったが、コロナ禍でできなくなった。今は辛抱の時期だが、いずれイベントやお祭りに繰り出していけたらという。「楽しく、ポップに、銭湯の良さを伝えていけたら。まず楽しんでもらうだけで嬉しい」

オンライン配信のトークイベントや、廃業した銭湯から集められた物品の展示などもある。詳しくはこちら。銭湯山車巡行の様子やトークイベントはこちらのYouTubeチャンネルで配信中。(敬)


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