ビニールのスイカをピコピコハンマーでたたくと、横にあるコンピュータが反応して音が出る。大勢の子どもの声が聞こえたりする!
7月に大塚地域活動センターオープンスペース(Oos、過去記事参照)で開かれた「オトフェス」に行ってきた。会場に入って最初に訪れたのは、東京音楽大学ミュージックメディアコース3年生のグループによる「ドドド・ハンマー~まさか、そんな!~」というブースだった。説明を受けたが、高齢記者はついていけない。担当の学生、下川一樹さんが作った説明文によれば「MAX/MSPを搭載したPCに、Wi-fi経由で、スマートフォンの加速度センサー情報をOSC(Open Sound Control)で送り、一定の値を超えた時に、あらかじめ仕込んでおいたオーディオが再生される」という。わかりますか?
Oos企画事務局で「地域プロデューサー」の肩書を持つ塩川浩司さんは、「やってるこっちもわからなくて、いったい、これどうなってるんだろうって」と笑う。「知り合いの東京音楽大学の先生に、音楽イベントではなく、オトのイベントやりたいと言ったら、ぴったりの学生がいますよ、と紹介されて。『ドドド・ハンマー』もその学生たちです」。しくみはわからなくても、音が楽しめればよいのかも。
ブースごとに大人と子どもが「カタカタ」「ピィーピィー」「ビヨーンビヨーン」と音を作り出して鳴らしたり、仲間と一緒に音合わせて歓声をあげたり、とにかく音があふれていた。チラシには「『オトフェス』は、いろんな音づくり体験が楽しめる一日です。文京区内で創作活動をしているアーティストたちが、それぞれブースを設置して音づくりのワークショップを開催! 出来上がった音の共演を楽しむ合奏タイムもあります」とある。ワークショップも4回あり、各回100人近くが参加して大盛況だった。
ブースは全部で12あった。入場無料で、楽器作りの材料費だけで楽しめる。ワークショップで作った音を持ち寄ってみんなで合奏する「合奏タイム」もあった。
すごい人気で試すことができなかったのは、一つ一つのボタンが鍵盤になっている「演奏できる食券機」。
一見食券機なので、おもしろい。注意書きまであった。
参加者がそれぞれの「悪口」の音をキーボードで奏でて、一つの音の世界にして、そこに浸れば心が浄化するという「浄化の部屋~悪口~」。訪ねてみたら、時間が早すぎたこともあるが、担当の学生がだれも戻っていなくて、あれ?と思ったら、全員が食券機で音バトルをして遊んでいたというオチ。
欲張って、「アサラト」と「おかしなふえつくり」に挑戦してみた。アサラトは、パラコードと木の実を使ってアフリカの民族楽器を作る。
木材に飾り付けし、笛を作る「おかしなふえ~木材でオカリナのような楽器をつくろう~」。
木の端材を使ったカスタネットやヘアピンを使ったカリンバを作る「お手軽楽器作り」もあった。
たこ焼き器を楽器に改造して、ピックさばきがビートを刻む「たこやきシンセサイザー」、ボタンを押すとピコピコとブザーが鳴るミニ電子楽器「ミニ電子楽器を作ろう」、音階に合わせて切った真鍮のパイプを落として演奏する「バンジーチャイム」、木の板を貼り合わせて箱を作り、中にコーン、小豆、BB弾などを入れて作る「マラカス」・・・興味深いものばかりだ。
音の正体を目で見て確認したり、スピーカーのしくみを学んだり、実際にスピーカー作りに挑戦したりする「音の話とスピーカー作り教室」もあった。
「オトフェス」は初めての試み。塩川さんは、「文京区には、モノ作りでも音楽でも、プロ並みの方が多く住んでるなって、ずっと思っていて、文京区のクラフト作家さんたちと一緒に、モノ作りのイベントをしたいと、去年の11月に『クラフェス』(クラフトフェスティバル)を開催しました」という。ご自身も建築関係のグラフィックデザイナーだ。
7月は、「モノ作り」ではなく「オト作り」のフェスにしたかったという。「音楽のワークショップは、そこそこあるので、オトそのものを作って、オトと人との関り方、オトの原点を楽しんでもらおうと『オトフェス』を考えました」。子どもたちは夢中になって楽しんでいたが、大人にも自由に楽しんでもらいたくて、そういうコンテンツを揃えたという。確かに、新しい時代に新しい道具で創作される音作りを楽しめるような内容だった。塩川さんは、「『オトフェス』は、春夏年に2回やりたいですね。『クラフェス』は秋冬の2回というふうに」。次回の「オトフェス」は来年(2025年)の春の予定。食券機は、その時鳴らせるかな。(稲葉洋子)