木のキッチンをDIYで/IT企業のオフィスにコミュニティーキッチン誕生/我楽田工房

アフター

もとは印刷工場だった場所を自分たちで改装して「我楽田工房」というコミュニティースペースを生み、さらに木のキッチンをDIYでつくってしまった会社がある。文京区関口1丁目のボノ株式会社。本業は「IT企業」としてシステム企画やデザインなどを専門としていたが、オフィスを地域に開放したことで人が集まり、さらに木のキッチンに人が吸い寄せられ、「コミュニティーキッチン」になった。代表の横山貴敏さんは「スペースを開放したら、人が人を呼んでくる。キッチンをつくってパワーアップした」と話す。

談笑

横山さんはこれまでWebの世界でSNSなどのコミュニティ・システムなどをつくり、多くの人間をデジタル空間に集めてきたが、本当の空間でも人を集めたいと考え、昨年夏、倉庫だった場所を、社員やご近所さんと共に天井板をはがし、天井と壁と床にペンキを塗ってオフィスに改装。夜間や週末にイベントやワークショップを開くようになると、たくさんの人と出会い、つながりができるようになった。

我楽田工房

次に考えたのはキッチン。「食べ物があると人が集まるんですよ。人は1日3回食事をするから、そのうちの1回の時間でもいただこうかと。最初はカセットコンロで料理していたのですが、やっぱりキッチンが欲しくなって」。ネットで調べていくと、木のキッチンを作っている長野県松本市の「スタジオママル」代表でキッチンプロデューサーの浦野伸也さんを知った。「野外で組み立てるキッチンも作っていて、それならDIYでできるかも、と思って」

プロセス脚組み立て

「さすがにDIYでキッチンを作るのは初めて」と浦野さんは笑う。もともと無垢の木で家具をデザインしていたが、10年ほど前からキッチンを手がけるようになった。「キッチンも家具と変わらないから、DIYも可能なんですよ」。打ち合わせを重ねてアイランドキッチンをデザインし、横山さんが近所の材木店に依頼して設計図通りの寸法の木材を用意。1月末、ほぼ2日間でキッチンを組み立てた。もちろん、シンクは天板にはまるサイズを特注したステンレス製で、水道やガス、換気扇などは業者が工事したが、ほかの部分は無垢の木。天板はサクラ材で、ほかは南洋材のアガチスなど。水をはじくように、ミツロウとエゴマ油を混ぜたワックスを塗った。

プロセス・台(逆さ)

京都府美山町の鹿肉ミンチを味わう会、土鍋でご飯を炊く会、日本酒の試飲会……食を中心にイベントを開くと、様々なジャンルの人が共に料理しながら会話を弾ませ、飲み食いしながら交流を深めるようになり、人の輪が広がった。「アイランドにしたから、食べるときも輪になるし、片づけるのも輪になる。孤独な洗い物からも解放された」と横山さん。

プロセス・台完成

浦野さんは「キッチンが変われば家族が変わる。それは家の外でも言えることがわかった。キッチンはコミュニケーションのツールだと確信した」と話す。キッチンが使いやすく快適になると、それまで台所に寄り付かなかったパパが料理をするようになったり、子どもと一緒にお菓子を作るようになったり。我楽田工房のキッチンをみていると、「見ず知らずの人が5分で仲良くなってすごい」。自然に人が集まる「コミュニティーキッチン」を、全国につくっていきたいと考えるようになった。

完成したキッチン

横山さんは、「キッチンがあれば、お昼に料理を作って、食べに来てよ、と言える。外食に比べ気軽さが違う」と話す。自分が人を訪ねていってコミュニケーションをとるのではなく、「来てよ」と言ったら、隣近所の商店から小学生まで、普段つながることのない人たちとつながることができた。「(他人の家を)ノックするのではなく、開放することから始めたら、矢印が自分側に向いてきた」

 

アイランド

地域と東京をつなげて、そこから生まれたものを商品やサービスにしたいと考えている横山さん。「このキッチンは第一号です」。浦野さんと共にDIYで作る組立型の木のキッチンとして販売していくという。(敬)