【まち】新鮮で個性的な野菜を週替わり農家の産直で/毎週日曜日にはりまざかマルシェ

 「小ぶりの白菜、いかがですか」「朝採りオクラですから、生で食べられますよ」。次から次へと来る客へ、野菜の種類や食べ方について、農家の人が解説する。毎週日曜日、文京区小石川の播磨坂にある熟成肉の店「中勢以」内店の中では、「はりまざかマルシェ」が開かれている。千葉県内の農家8軒ほどが毎週交代でやってきて、自分や仲間の農家が作った野菜を販売している。
 発起人は、千葉県松戸市でタケイファームを営む武井敏信さん。2012年7月から始めた。もともと中勢以の会長と知り合いで、「季節感を出すために野菜を売ってもらえないか」ともちかけられたのが始まり。毎週1人で野菜を運んで売ることはできないので、千葉県内の農家に声をかけたところ、8人が集まった。「千葉は新規就農の方が多い。どこかで研修したあと、畑を借りて就農するものの、売り先がない。そういう農家にとって、売り先の確保と売り方の勉強にもなる」と武井さんは話す。
 中勢以といえば熟成肉ブームの火付け役で、小石川の中勢以内店はミシュランの星も取っている有名店。その場所でマルシェをやるからには、クオリティが大事だ。これまで4年やってきて、野菜の品質が悪いために脱退してもらった農家もある。一方で、シェフに野菜を気に入られ、販路を広げた農家もある。「月1回ミーティングして情報交換し、半年に一度はそれぞれの野菜セットを持ち寄って品質をチェックする。ブログを交代で必ず書くし、マルシェの当番も交代で回すなど、仲良しクラブではなく、厳しくちゃんとやっています」
 武井さんは代々農家の家に生まれ育ったが、自身は長らく会社勤めで営業マンをやっていた。あるとき親の手伝いをしたことがきっかけで、農業の面白さに目覚め、15年前に就農。これまでに350種類もの野菜を栽培し、年間でも140種類以上を栽培する。主に飲食店と取引をしているという。「カブといっても150品種ぐらいあり、品種によって味も違う。農薬を使わないといった栽培方法だけでなく、種類の多さや目新しさ、朝採りの新鮮さが売りです」と武井さん。
 マルシェに集まった仲間も同様の志向の農家が多い。2年ほど前、みんなで熱海あたりに旅行に行こうという話が持ち上がり、その資金集めに、各農家で季節の野菜をセットで販売する「野菜セット」を売り始めた。途中で、「どうせ行くなら農業国フランスへ」という話になり、野菜セットの売り上げを貯金。若干足りなめだったので昨年秋、メンバーの畑でシェフを呼んで料理を作るイベントを開いたら90人もが集まり、めでたく目標額を達成。今年2月の農閑期にみんなでフランス・ブルターニュへ行って、オーガニックファームなどを視察したという。
 千葉県柏市の大岩友紀子さんは、西洋野菜や珍しい野菜を作ってきた。「スーパーで売っていない使いやすい野菜を作りたいと思った」と話す。会社員生活がつまらなくて、食べ物を作って生きていきたいと、宮崎県で研修を受けたあと4年前に1人で新規就農。2年前に「まちコン」ならぬ「畑コン」で夫と出会い結婚。いまは岩立姓を名乗る。1人で就農して大変だった経験から、女性が農業に携わるには結婚が良いという考えに傾き、自身の野菜作りは一区切りつけ、農業専門の婚活サイト「Raitai」を立ち上げた。「マルシェでは常連さんもでき、いい経験をさせてもらった」という。
 千葉県松戸市の眞嶋農園の眞嶋洋行さんは11月のマルシェで、メンバーの農家の分も含め41種類の野菜を持ってきた。お客さんからの問い合わせには一つひとつ丁寧に応対。「基本、説明がつくものを持ってきていますから」。マルシェのメリットについては「八百屋が減って、いまや野菜はスーパーで買うしかない。売っている人はその野菜がどのように作られてどんな特徴があるかがわかっていない。生産者が自分の思いや知識を直接伝えられるのが、マルシェの意義だと思う」と話していた。
 はりまざかマルシェは毎週日曜日10時から、文京区小石川5丁目10-18の中勢以内店内で開かれている。午前中にだいたい売れてしまうことが多いという。詳細ははりまざかマルシェFacebookページかブログで。