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「このまちにやく味あり」。まちじゅうが展覧会場、芸工展2017はじまる

芸工展2017」がスタートした。

開催中で大忙しとは知りながら会見をお願いした。なんとか時間を捻出していただくことができて、実行委員の渡真利紘一さんと村山節子さんから「芸工展2017」についてお話をうかがった。

「芸工展」とはなにか。(芸工展HPより転載)

芸工展は毎年10月、谷中・根津・千駄木・日暮里・上野桜木・池之端界隈を舞台に開催されています。

まちに暮らす人々の日常の創作活動や表現を大切に紹介し、まち内外の多くの人がまちの魅力を語り合う場を、また『日常の延長としての表現』を通して、まちの様々な人が互いの生活を理解し、認識を深めていく交流の場を目指しています。

芸工展の参加者は、筆や彫金、せんべい、鼈甲といったこのまちに根付く職人の技の他、まちに点在するギャラリーでのジャンルを問わない展示やアーティストのアトリエの公開、路地や街角でのワークショップ、また自宅の一室で行う展示などの自主企画からなります。十数店の参加者とはじめた芸工展は、現在100近い企画数まで拡がり、訪れる人々にとってまちの未知なる魅力を発見する場となっています。

表現を通じた交流を模索

実行委員のお二人にお聞きした。まずは渡真利紘一さん。

「2008年に、大学の先輩で芸工展実行委員をしていた山田絵美さんに誘ってもらい、はじめて谷中を訪れました。それまで私は東京が苦手でした。谷中は知らないまちでしたが、寺町の景観が妙に心地よく、広い空やあたたかい人たちとの交わりから、すぐにこのまちに魅了されました」

渡真利さんは当時のアルバイト先(ハウジングアンドコミュニティ財団)の仕事で、「谷中のまちづくり史研究」に携わった際、「このまちがうまくいっている背景には、どのような要素が関係しているのだろうか。住みながらその要素について知りたい」と感じていたそうだ。そうした関心から、翌2009年、芸工展会期中に本部香隣舎での当番のお手伝いを経て、その4カ月後には、実行委員の村山さんの協力のもと、良い物件とめぐりあい、藤沢のご実家から引っ越して谷中に住むことになったそうだ。翌年は実行委員に。以後7年間、毎年、どうしたら表現を通じた交流が深まるのか、模索・実践をくり返しながら活動を続けている。

まちづくりグループ谷中学校(やなかがっこう)がはじまり

次は村山節子さん。

「まちづくりグループ/谷中学校運営メンバ-で、そこから芸工展の実行委員としてスカウトされました。芸工展は谷中学校の活動として始まった活動でした」

まちづくりグループ/谷中学校とは、「谷中界隈の生活文化を大切にし、まちの魅力を育て未来に受け継ぐために、関連した活動を支援し、良好なネットワークを形成することを目的とし、活動の成果を地域に根ざしたまちづくりの例として、谷中地区及び他地区、地域において、広くまちに還元する」(上記HPより転載)ことを目的とした会だ。

「谷中学校の活動として、質屋さんをリノベーションして、ギャラリー小倉屋を作り、そこで芸大生の作品展をやったのが、芸工展第1回目でした。」

ご自身もずっと、子どもたちの造形教室を開催していて、芸工展に企画参加している。今年もギャラリーTEN(谷中2-4-2)に展示するそうだ。

「実行委員会には、3回目からひたすら懲りずに関わり続けています。人との交流、さまざまな表現に出会えるのがおもしろいです。近隣の向丘に住んでいますが、そことは違う魅力が、谷中や根津や千駄木のあたりにはあります。家並み・まち並みの良さ…家が密集していて、路地があり、その景観がよくて、有形無形の谷中のトマソン(建築物に付着して美しく保存されている無用の長物のこと)が、あちこちにあります」と語る。

「まちづくりって何?」村山さんは芸工展実行委員を続けながら、いつも問い続けているそうだ。

「まちのやく味」を探しに行こう!

「『このまちにやく味あり』これが今年のキーワードです」と渡真利さん、村山さんは声をそろえる。

まちのやく味とは、まちをこのまちらしくしているものや、まちの旨みをうまく引き出している要素のこと。そうした意味では、芸工展参加者の1人ひとりも、まちのやく味だという。

キーワードに関連したものとして、今年はたのしいめぐり方、題してオリエンテーリング「まちのやく味をさがせ」という企画がある。

「このオリエンテーリングは、4つのまちのやく味のカテゴリー『日常の表現を味わう文化』や『個性あふれるギャラリー』、『芸と技の光る店/工房』や『まちを愛するひとの活動』に分類された参加者の企画をめぐりながら、各参加者が考える『まちのやく味』を尋ねながらまちをめぐるウォークラリーイベントです」

近年大切にしているもうひとつのキーワードは、「FacebookからFace to Faceへ」です。

「ちょうど私がかかわり始めた頃の参加者数は過去最大で200企画ありました。“まちじゅうが展覧会場”というキャッチフレーズがあったので、さらに参加者を増やそうとしていましたが、数が増えたことで一度も顔を合わすことなく会期が終わっていくこともありました。1人ひとりと表現を通じた交流ができる、ちょうどよい大きさを維持していくことの大切さに気づき、その後は、Face to Faceの距離感を大切にした運営に軸足をおくことにこだわってきました。」と、渡真利さんは振り返る。

実行委員会は参加者やまちの人たちに力を借りながら、参加しやすい形を、まちに住んでいる人のお互いに身近な表現を通じて歩み寄れるようにすることを模索してきた。20周年を迎えた頃から、5年が経過して、その方向は間違っていなかったと、お2人は確信している。それが「芸工展2017」で結実している。

たとえば七夕のように、毎年10月は芸工展月間

「今年の表示に、毎年10月は『芸工展月間。』というのがありますよね」。渡真利さんが謎かけをするように言う。「来年以降、キーワードはずっとこれです」

えっ、何? 「毎年の行事のように、たとえば七夕で家々が笹に短冊を吊るす風習のように、毎年10月になると、まちのひとが自発的に日常のささやかな表現をまちに持ち寄ったり、普段は閉じている場を開いてみたり、そうしたひととひととが交わることのできる文化を皆さんと育てていきたいと思っています」

ええっ~。それはすばらしい! いや、まて。そんな簡単にいくわけない。

「消えてしまうかもしれないじゃないですか~」と食い下がってみた。

「今年の参加者には全員芸工展の賛同人になっていただけた。参加者とも思いを一つにしている今なら、きっと実現できると信じています。実行委員としても1年かけて、時々カフェを開いて話し合いの場を設けるなど、最低限の体制は整えていきたい」とのこと。

実行委員会のメンバーは、まちと人を信じているのだなと思った。それならいっしょに進もう。

次号では、企画のうちいくつかを取材していきたいと思います。(稲葉洋子)

※写真は実行委員のお2人の写真以外は過去の芸工展のものです。

芸工展2017   10/1(日)~10/31(火)コア期間は10/7(土)~10/15(日)

主   催    芸工展実行委員会&賛同人/まちかど展覧会参加の皆様

事 務 局   〒113-0022 文京区千駄木5-17-3(谷根千記憶の蔵)

E-mail     geikoten@gmail.com

芸工展本部   香隣舎 台東区谷中7-17-6(コア期間:10/7~15のみ)

※オリエンテーション「まちのやく味をみつけて、記念品と交換しよう!」参加方法

参加店で「まちのやく味券」を受け取ってスタート♪

交換期間:10/7(土)~15(日)10時~17時

交換場所:本部※香隣舎にて


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