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舞台芸術パワーを浴びて、感じて/今年も「ふれあいこどもまつり文京」、公演は3月18日

 都内数カ所で行われている舞台芸術の祭典「参加・体験・感動!ふれあいこどもまつり」。文京区では昨年に引き続き2年目を迎える。3月18日(日)文京シビックホールで行われる「人形劇チップとチョコ」(人形劇団ひぽぽたあむ)と「0歳からの・はじめてのオーケストラ」(日本サロンコンサート協会)の公演と、その前に区内あちこちでアウトリーチ活動があり、それらを含めての「ふれあいこどもまつり」だ。

アウトリーチは区内8カ所の小学校、保育園、民間の施設や団体が取り組む予定で、すでに2カ所で年末に実施された。その2つのイベントを報告する。

「だれも見たことのない生き物を作ろう」@こまじいのうち 12/22(金)14:00

3月18日にも公演する、人形劇団ひぽぽたあむの代表、永野むつみさんによるワークショップ。前年度は汐見地域活動センターでも開かれており、今回は、地域の人々が異年齢でゆるくつながり、気軽に憩える居場所、文京区本駒込五丁目にある民家「こまじいのうち」で行われた。

この日は金曜日で、いつもは「こまじいのうち」では小学生向けの「こどもあそび隊」がある日。ところが地域の小学校がインフルエンザのため学校閉鎖中で、そのせいか子どもの参加は少なかった。その代わり、直前のプログラムに参加していたたくさんの高齢者のみなさんが残って、「だれも見たことのない生き物を作ろう」にも参加してくださった。

子どもたちに対しても、高齢者の方々に対しても、永野さんの姿勢は同じ、指図されたり、アドバイスされたりしないで自分が作りたいものを、好きな色の好きな材料で好きな形に仕上げていくように、あれこれ選びながらいろいろな道具を使って作っていく。

高齢者の方々の作品作りには、その人の生きてきた長い経験が濃く吹きこまれている。花屋さんだった方が作った生き物は「花」という表現、というように。子どもたちもそうだったが、高齢者の方も、作りながらどんどん表情が輝き出す。その人らしさが現れてくるのがわかる。このような芸術的手法の表現活動の場は、競争もなく、お互いを認められる場となる。人々が日常的に自分らしく生きられる場にいられたら人と人との関係は変わり、生きる環境も変わっていく。こういうプログラムはどの世代にももっとたくさん必要ではないだろうか。

子どもと一緒に参加した近藤美加子さんは「大人が夢中になるほど楽しいワークショップでした。1人1人個性のある作品が出来上がり、とても楽しい時間を過ごす事が出来ました」と話す。「画用紙、紙袋、封筒にも様々な色があり、ちょっとした色の変化でも見えてくるものが違うことに驚きました」

「その人らしさ」が現れる場を紡ぎ出す永野むつみさん

――人形劇を始めたきっかけは何でしたか?

人の育ちに関わる人は何か好きな芸術を! が持論の私。芸術の前では年齢も経験も問われず「対等」ですから。ずいぶん前の話ですが、三多摩のある児童館への就職が決まったものの、まずは人形劇を勉強したいと願い、就職を蹴り、人形劇学校へ入学してしまいました。

――人形劇を上演なさるとき、見ている子どもたち、大人たちと、何を分かち合いたいですか。

 私が上演する人形劇にはダメな人が急に立派になるというものはありません。支え、支えられながら、何かしらの解決を見出すという展開が多いですね。人は一人では生きていないことを、観る人たちとあらためて考えあい喜びあいたいです。

――3月18日(日)シビック公演に向けて、どのような思いをお持ちですか。

 「めげない、あきらめない」ということを伝えたい。自分を信じて生き抜く力はどこで育つのだろう。「大人が見守る」って何? 観ている人たちといっしょに考えたい。

 人形も、舞台も、お話もどこにでもありそうで懐かしくかつ新鮮。大人にも観ていただきたい細やかで穏やかでパワフルな世界です。

 

「モンちゃんのミニマジックショー&ちょっとマジック体験」(制作:マジックビスケット、出演:モンブラン)@民間学童クラブ「Tree & Tree本郷真砂」12/26(月)10:00

 文京区本郷4丁目、本郷小学校の隣にある、「Tree & Tree 本郷真砂」は、子どもたちが地域のさまざまな世代の方々と交流しながら放課後をすごすことを特色のひとつに掲げている地域密着型民間学童保育。本郷に住む代表の林育恵さんが立ち上げた。

 モンちゃんことモンブランさんが荷物を運び、準備をはじめる頃から、三々五々子どもたちがクラブに集まり、宿題に取り組んだり、読書にいそしんだり、林さんや学童保育スタッフとおしゃべりを楽しんだりしながらも、このあと何が始まるのか気になっている様子。

 ワークショップ開始の、10:00より前に、モンちゃんは黒幕から出てきて、子どもたちとやりとりを始め、自己紹介した。さっそくマジック開始。白いハンカチに、「モンちゃんパワー!」とマジカルジェスチャーをかけると、あら不思議、ハンカチがスティックに。白いハンカチにもどし赤いハンカチとあわせてグルグル回してパッと広げると、赤と白の水玉になっている! 「え~」。子どもたちは目を丸くする。

「ぼくの得意なのはトランプなんですよ!」といいながら手の平に広げたトランプが全部赤の札になったり、手の平から消えたり出てきたり、消えたと思ったら今度は口から出て来たり!紙袋から、出しても出しても次々出てくる花の入った箱、最後に出てきたのは、ちょっと大きめの白い鳩。(あら、搬入したときはどこにもいなかったなあ。ほんとに袋の中から湧いてでたのかしら)。「名前はショコラっていうんだよ」と子どもたちに触らせてくれる。大きな舞台だとあまり触るチャンスはないんじゃないかな。

 「マジックは大きく分けると4種類。小さい場所でやるクロースアップマジック、100人くらいの前でやるサロンマジック、さらに規模が大きくなるとステージマジック、たくさんの観客の前でやるイリュージョンマジックがあるんだよ」とモンちゃん。少人数の場でないとできないマジックがある、今日はそれができる、と準備中に言っていたモンちゃん。クロースアップマジックのことだったんだ。

 「いままでどんなマジックを見た?」とモンちゃんは子どもたちに聞いた。「コップの中のペンが浮く!」「口の細いビンからトランプがそのまま出てくる!」「それ難しいねえ。」と言いながら、それまで縦長に使っていた部屋を横長に、子どもたちに見えやすい位置に移動。

  「これから内緒のマジックを教えるよ。教えたら他のマジシャンに怒られるヤツね」。子どもたちひとりずつに(もちろん大人にも)、コイン数枚とハンカチ1枚とトランプ2枚と割り箸1本を配る。ハンカチの真ん中にあったはずのコインが消えて、他の場所から出てくるマジック、ハンカチの四隅に置いたコインが瞬間移動するマジック、割り箸の先に着色した色が見えたり消えたりするマジック。

 お手本を見て、「あれれれれ~?」「え~!どういうこと?」「わー!いいね~!」「あ、わかったよ~」口々に叫ぶ子どもたち。種明かしをしてもらい、何度も練習する。「できた~!」みんな嬉しそうだ。林さんも、スタッフさんも楽しそう。(この種は明かせないので、どうなっているのか考えてみてね~)

 最後は「スプーン曲げ」。1時間はあっというまに過ぎてしまった。

 

参加と体験、感動を子どもたちに

昨年に引き続き、「ふれあいこどもまつり」のアウトリーチは、幼稚園や小学校、児童館、さらに小規模の子育ての民間施設で開かれている。アーティストと子どもたちとの距離が近く、きめ細かいコミュニケーションが取れて、参加した子どもたちの心に残る活動になっていると思う。

文京地区の地域プロデューサーである山根起己さんは、人形劇団ポポロの代表でもある。なぜ「ふれあいこどもまつり」の実行委員をしているのか。

「十数年前、私は児演協(日本児童・青少年演劇劇団協同組合、「ふれあいこどもまつり」で実行委員会を形成する団体のひとつ)では特別な立場ではなく、若手として意見を求められる立場でした。ある日、児演協の首都圏支部長の長谷さん(人形劇団プーク)から『新しい形のフェスティバルを東京都から要望されている。ついては、若手の何人かでチームを作り企画を立ててほしい』という話があり、興味があったので参加しました」

ふれあいこどもまつりも今年で14回目になる。どんなねらいと特徴をもっているのだろう。

「タイトルにもした通り、『参加・体験・感動』が目的です。まず、特徴であるアウトリーチによって、普段舞台芸術にふれる機会のない子ども達への参加を広げる。体験することで文化に直接ふれてもらう。最後に、この催しを通じて見せる側、観る側関係なく心を動かし合い、感動で包み込みたい、包まれたい」

文京区は山根さんが学生の時に沢山の思い出が残る街なのだそうだ。「新旧が混ざり合う街の形が濃く、文化に対して一定の理解が得られている地域といった印象です。毎年、児演協のフェスティバルに育成室の子ども達が訪れていますが、そんな子ども達に、より身近な居場所で、いつもの仲間と一緒にふれあって欲しいと感じています」と話していた。

 

【公演情報】

◎「チップとチョコ」

2018年3月18日(日)11:15~12:00 文京シビックホール小ホール

人形劇団ひぽぽたあむ tel/042-369-1246(fax/042-369-0644) 

◎「モンちゃんのマジックショー モンちゃんパゥアー」

2018年年3月24日(土)14:00 亀戸文化センター

マジックビスケット tel/0428-34-9224

 

ふれあいこどもまつり実行委員会事務局 03-5909-3064(fax03-5909-3065)

2018児童青少年演劇祭典HP


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