触れると目がグルグル回る人物画(?)。ビー玉転がしができる壁面飾り(?)。なんだかおもしろいものがいっぱい。アートとトイ(おもちゃ)が出会う「ARTOY2023」が、神田・神保町の文房堂4階ギャラリーで20日まで開かれている。大人も子どもも真剣に遊べる。
2004年に始まり、今年が19回目。「知人の個展の打ち上げの場で飲みながら、アート(ART)とトイ(TOY)を一緒にやってみたいねと、開催が決まった」。最初からかかわっているデザイナーの中井秀樹さんはそう振り返る。アートとトイなら、ARTOYでいいじゃないか、と名前も瞬間的に決まったそうだ。
母体になったのは、「つくり手」「あそび手」「ひろめ手」からなる日本おもちゃ会議という草の根の団体(閉会)だった。この組織はなくなっても、ARTOYは続いた。「組織化せず、毎回『この指とまれ』方式で気楽にやっている。それぞれの役割がなんとなくできて、みなさん積極的に動いてくれる」と中井さんは言う。メンバーが知人や面白い人を誘って出展するコネクションシステム。「どうです? 次、出展しますか?」と中井さんに言われてびっくり。「え?私?」。こういうノリで人の輪が広がっていくようだ。
毎回展示のテーマがあり、今回のテーマは「さわやか」。これまでに「無限」「響き」「記憶」「希望」など難しいテーマもあったが、「毎回どのように自分の畑に持っていくか、考える時間が面白い」という。
中井さんは、額縁の光センサー部分に触れると、人の絵の目の部分が回る作品や、卵が浮きあがってコップに触れると音が鳴る作品を出展した。初期からのメンバー、花島平さんは、青い光の当たったアクリル板の作品を出展。階段状の部分にビー玉をゆっくり転がすことができる構造で、作品名はBi-DaMa-To(ビーダマート)。「ビー玉とアート、だじゃれです」
魚やカメやクジラなど海の生き物を青い布に散らしたのは井上かおりさん。「実はこれ、指人形なんです」。棒をつけることもでき、人形劇にも活用できる。会場には何人か作家もいるため、その場で聞きながら遊ぶことができる。
出展者はデザイナー、建築家、子ども関係の職業の人など、さまざま。昔なつかしいトンボやバッタの木のおもちゃの出展者は農業が本業という。ラベンダーの香りの風が吹いてくるふいごを作った人は会社経営者だそうだ。教育系の大学教授である石川秀香さんは回転体が専門で、「毎年新作を出してくるんです」と中井さん。ARTOY2023のハガキもデザインしているが、ハガキそのものも、一部を切り取れば「風をあてると回る」回転体のおもちゃになるというつくりだ。
「作品を見て毎回いろんな発見があり、次のアイデアに生かす場にもなる」。技術レベルはまちまちだが、それぞれの個性が出てかえってよいのだという。「知らない素材を使っているのをみて、こんなのあるんだと気づかされたり、互いの刺激にもなるんですよね」
20日まで、文房堂(千代田区神田神保町1-21-1)4階のギャラリーで開かれている。11時~18時(最終日の20日は16時まで)。入場無料。(敬)