壱岐坂途中にある東洋学園大学のわきを本郷3丁目方面へ入っていく道が「大横丁(おおよこちょう)通り」。その一角に、Café&Apéro Taro Taro(カフェ&アペロ・タロタロ)はある。2022年11月に開店。リフレクソロジストの井口幸子さんが、料理人の夫、卓也さんと始めた店だ。カンガルーやワニのほか、鳥取県大山(だいせん)市の大山鶏や卵がウリ。自宅が近所なので、「地域のみなさんの心と体を健康にしたい」と言う。子どもが1人だけでも食べに来られるし、女性が1人でちょっと1杯飲みにくることも。夏休み後半となる8月下旬は、小4から高校生を対象におやつ付の「夏の自習室」を開く。
飲食店で働いていた卓也さんがコロナ禍で失業したことがきっかけで、あれよあれよという間に開店した。「たまたまネットでこの物件が空いていることを見つけ、翌日に内覧、申し込み。資金繰りもメニューも考えず、勢いで」と幸子さん。すでにリフレクソロジストとして独立起業しているので、「2人とも起業すると経理とか面倒」と考え、資金調達には幸子さんが動いた。メガバンクは「どうして夫ではないのか」と貸してくれず、地元の信用金庫から借りることになった。しかしメニューも決まっていない。夫が前の店で出していた「ワニやカンガルーを出します」と思い付きで答えると「ジビエですね、いいじゃないですか」と微妙に勘違いされたが、ともかく、審査は通った。文京区の融資制度の支援も受けられることになった。
内装は、PTAの人脈で地域の工務店がやってくれた。リフレクソロジーのお客さんが、「IKEAにいい家具がある」などとアドバイスしてくれて、照明も床も整っていった。物件を見つけてから3カ月ほどで開店にこぎつけた。
幸子さんは「オープンしたものの、何を出そうか?という始末で」と笑う。まずはオムライスと親子丼のランチからスタート。以前卓也さんが働いていた店で大山鶏の鶏すき鍋を出していたことから、大山鶏を扱い、鉄分が摂取できる南部鉄器の鍋で煮る鶏すき鍋をメニューに加えた。もちろん、ルーミート(カンガルー)とワニも。テイクアウトもやっている。「メニューをもう少し整理して何屋さんなのか言えるようにしたい」という。
ワニやカンガルーの調理は手がかかるため、13時以降のメニューとなっている。大山鶏も魅力的だが、せっかくなので「ワニタンと冬瓜のスープ煮定食」を頼んでみた。ビタミンやコラーゲンが豊富で、DHAやオメガ3系脂肪酸だとかも含まれるそうで、体によさそう。鶏肉のようでさっぱりしており、冬瓜との相性もよく、酷暑の昼にはもってこいの味だった。ミョウガや大葉が入っている大根の浅漬けは自家製かな。そして、お椀に盛られた白くピカピカ光るご飯がとてもおいしい。
「飲食業のご飯って、安くてそこそこの米を使うのが普通と聞いて、そんなのあり得ないと思って。新潟でハーブ栽培をしている知人の会社が作っているコシヒカリを使っています」。カフェメニューも、国産・無添加ハーブティーは知人の栽培しているものを使っているし、「青森りんご農家さんのリンゴジュース」は、親類が青森の農家だというご近所さんからしばしばいただいていたリンゴジュースがあまりにおいしいため、その農家から直接仕入れている。割り箸は岐阜県郡上市の間伐材を使った「郡上割り箸」、ナプキンにはコーヒー豆皮が使われていると書いてあるし、メニューだけでない細部にこだわりを感じる。毎日余った卵などを使ったまかない飯を食べている幸子さんは爪が厚くなり、肌もつるつるになったとか。
「ママ友、パパ友、地域のみなさんのおかげで何とかここまで来られた。自分も子育てする中で助けられてきたので、今大変な時期の子育て家庭を助けたい」。客のほとんどが知り合いか地域の人で、「人のつながりのすごさを改めて実感している」という。卓也さんも「刺激的な毎日を送っている」そうだ。夜も営業しているが、21時までが基本。店名の「アペロ」はフランス語で、夕食前に軽く飲む習慣のこと。「夕食前に軽く一杯飲んで帰る、そんな新しい文化が根付くといいかな」と幸子さん。
テーブルごとのレンタルスペース事業というのもやっている。アイシングクッキー教室や、英語のレッスンなどに活用されている。その一環として、8月16日から週2日ほど、小学校4年生から高校生が自習に使える日を設ける。英語の先生や数学系の先生が常駐する日もあり、わからないことを質問できる。料金は先生がいる日は2000円、いない日は1000円で、おやつ付き。事前予約制だ。詳細はFacebookなどで確認を。
Café&Apéro Taro Taro(カフェ&アペロ・タロタロ)
文京区本郷2-18-12 諸岡ビル1階
営業時間:火~金:9~14時、16~21時、土:11時半~14時、16~21時(いずれもL.o.20時)
日:応相談
定休日:月曜