古アパートが文化はぐくむカフェ・ギャラリーに/「東京の過疎を解決したい」/谷中のHAGISO

HAGISO外観

谷中にある宗林寺の境内の一角に、黒塀に黒壁の「HAGISO」がある。1階はカフェギャラリーレンタルスペース、2階はヘアサロンやオフィス。築60年の古びた木造アパートが、2013年、文化をはぐくむ「最小文化複合施設」に生まれ変わった。

カフェ店内

解体して駐車場になる運命だったボロアパート「萩荘」を救ったのは、若きアーティストたちだった。萩荘は芸大生のアトリエやシェアハウスとして使われていたが、東日本大震災をきっかけに、大家さんが取り壊しを決めた。愛着ある建物が壊されるなら、いっそ「建物の葬式を華やかにやろう」ということに。

入り口

 (入り口では文鳥がお出迎え)

 2012年の早春、かつての住民も交え、萩荘の空間を使った作品展「ハギエンナーレ」を、3週間開いた。壁にビスを打ち込み、ボロボロに崩壊させた。天井を破って2階までの吹き抜けにし、金網をはって、文鳥を放した。約30人のアーティストが、絵やオブジェ、映像作品などで萩荘を埋めた。すると、1500人もの人が来場。大家さんも楽しんでくれ、「もったいないかな」と保存の方向に話が変わった。設計をやっている人が「自分に改修させて」と頼み込み、新生HAGISOが誕生した。

(ギャラリー上の吹き抜け。ここに文鳥を放した)

ギャラリー

(イベントスペースにもなるギャラリー)

 HAGISO運営者で2階に自身のオフィスを構える建築家の宮崎晃吉さんは言う。「学生や単身者は一人だと食生活も寂しい。人とのつながりがなく、東京の真ん中なのに、人間関係が過疎。食事や空間を共有できる場があるといいなと思った」。設計が専門だから、カフェもギャラリーの運営も素人。「今は素人が何でもやっていい時代。必要なのは、自分の時間を捧げる覚悟」と話す。クラウドファンディングで立ち上げの資金を集め、内装などもみんなで協力してつくった。「金を払ってつくることもできるけど、そうすると場所のオーラが出てこない。応援してくれる人が多く、作業は楽しい」。情報誌「HAGI PAPER」も妻と2人の自家製だ。

(宮﨑晃吉さん)

 駅からどちらかといえば遠いのに、週末はカフェは満席。コンサートやダンス、映画上映などのイベントや、パフォーマンスを注文するとダンスや音楽などが運ばれてくる「パフォーマンスカフェ」なども企画。ジャンルを問わず、常に実験的で楽しいものを追求している。(敬)