甲子園が沖縄尚学の優勝で幕を閉じ、そろそろ夏も終わりかと思えばフィリピンで発生した台風に引っ張られる形で南からの熱気が居座る8月の24日、小石川の傳通院で地域のお祭り「文京思い出横丁」が開かれた。2022年からボランティアの運営で毎年開催され、今年で4回目。焼きそばやかき氷など18の屋台、津和野町や天竜村など10地域の物産展、本堂横の繊月会館では11のワークショップ、夕方には島根・津和野の石見神楽、新潟佐渡の鬼太鼓、射的、くじ引きなどのゲームコーナー、ビンゴ、 手持ちの花火コーナー、やぐらを組んでの盆踊りなど盛りだくさんの内容で、入口の警備スタッフのカウントで7,700人を超える来場者があった。

一般的に夏祭りは町会や商店会など、町の重鎮が仕切り、業者を呼んで運営される場合が多いが、文京思い出横丁では「お祭りの運営を通じて町のつながりを作る」というテーマが掲げられており、このテーマに共感したボランティアの多く(おそらく半数以上)は高校生と大学生である。2月からほぼ月に2回の間隔でミーティングを重ね準備を進めてきた。お祭りで発生する大量のゴミをどうするかについても、エシカル消費の観点からいろいろなアイデアを出し合って対策を練っている。今年は再生プラスチックを利用したタンブラーをオリジナルで作成し、デポジット制で貸出を行うことにした。このタンブラーを使うと割引が受けられる屋台が複数箇所あった。

また、本来なら廃棄されてしまう摘果ミカンを手で絞り、区内の醸造所であるカンパイ・ブルーイングでエシカルなクラフトビールに仕上げて出店。東洋大学のサークルIN Cloverが担当した。

夏の祭りでは提供する食品の扱いには細心の注意を払う必要がある。各屋台ごとに担当が調理手順を事前に提出し、飲食業の現役や経験者がチェックを行った。当日の天気などにより人出も左右されるので、各屋台の売れ行きに応じて1時間ごとに追加の買い出しを行うなど、食品の衛生管理とロスの削減に万全の体制を敷いた。

ステージでは実行委員長、区長、来賓の挨拶に続いて郁文館グローバル高校有志によるハカのパフォーマンスで始まり、フラやエレクトーン演奏、バンド演奏などが続いた。夕方には佐渡の鬼太鼓や石見神楽も上演された。

本堂の左手に繊月会館というホールがあり、そこではメダカすくいや石鹸づくり、ハンドメイドクラフトなどのワークショップや、和算、クイズ、パターゴルフなどのコーナーで賑わった。

境内の右手奥に淑徳学園の校庭に通じる門があり、その向こうでは射的、ヨーヨー釣り、くじ引きなどのゲームコーナーと、消防署の企画する消化器体験コーナー(実際には水が出るように改造したものを使用)や、消防車や救急車のデザインを模したカートに乗れるコーナーもあった。

夕方からは境内で手持ち花火、淑徳学園の校庭ではビンゴ大会が開催され、その後盆踊り。盆踊りは事前の練習会などもあり、2段組のやぐらや和太鼓などの演出も凝ったものになっていた。音響は早稲田大学放送研究会が担当した。

これまでは、屋台の出店に必要な機材など業者にレンタルで借りることが多かったが、4年目の今年はすべての機材や道具を区内の町会やメンバーの知人を通じて支援を申し出た地元の企業などから借りることができたという。

エシカル推進プロジェクト担当の横山貴敏さん(我楽田工房/Bono Inc.)は「年々増えるお祭りのゴミ問題を背景に、学生たちがお祭りの楽しい部分だけでなく、環境問題のような社会課題の解決に主体的に取り組むきっかけをつくることができた。今年の成果を踏まえ、来年の5周年に向けて、さらにパワーアップした取り組みに挑戦したい」と話す。

文京思い出横丁を主催したNPO法人文京BASE理事長の北永久さんは「本年、第4回目を迎え、文京思い出横丁のお祭りとしての側面を見ると、完成度は随分と高まってきたと思います。しかし、文京思い出横丁の目的は、地域の課題を地域のみんなで解決することにあり、お祭りとしての側面は、この目的を達成するための手段に過ぎません。来年5周年を迎えるにあたり、手段が目的化しないよう、しっかりと初心に立ち返り、文京思い出横丁を通じて形成された新たなコミュニティーを活用し、地域の課題を地域のみんなで解決していく実例をつくり、それを周年記念企画としていこうかなと考えています」。では、どのような企画とするか。「それは、またみんなで色々な案を出し合い、みんなで一緒につくっていこうと思います」(竹形誠司)

