「筆が天井を向くように持って。ここで、この角度でとめます」
習字の先生が筆に手を添えて、「お正月」の書き初めの宿題をサポートしていた。

新学期が始まる前日、コーシャハイム千石の集会室で、書き初めワークショップが開かれた。先生は、地域に住む書道家。企画したのは千石の住民が立ち上げた「Curina Buddy(キュリナ・バディ)」という団体だ。

お正月のあさです。「おめでとう。」と、みんなでいいました。ことしもげん気でがんばります。
低学年は硬筆だ。お手本に従い、懸命に書いていく。「『で』の点々はここにね」。先生が丁寧に寄り添っていた。

キュリナ・バディ代表の松本道子さんは「うちの子たちは習字が苦手だった。そういう子たちもいるだろうから、地域の先生に習って冬休みの宿題をやろう、という趣旨。字に向き合う機会が年に一度ぐらいあってもいいですよね」と話す。

松本さんは子どもが4人おり、PTAや青少年健全育成会の活動をたくさん経験してきた。「区内の下町にいたころは、うちでよその子が食べる、よそでうちの子が食べるなんて当たり前。5人の親が15人の子どもを育てるみたいな感じだった」という。みんなで育てることが大事だと痛感した。

千石に引っ越して最初は地域性の違いに戸惑ったが、10年以上たち、町会や祭りにもかかわり、地域を盛り上げる活動に力を入れてきた。その中で見えてきたのは「顔の見える関係」の大切さ。地域で顔の見える関係がないと、災害にも犯罪にも弱い。町会の担い手は高齢化し、若い人たちは日々の生活に追われて余裕がない。では、どう顔の見える関係をつくって、つながっていけるのか。

イベントなど楽しいことをやっていれば、人が集まるし、これをやりたい、という人が出てくるかもしれない。そうすれば「バンドやってた人ですよね」「お祭りやってた方ですよね」と、顔が見えてくるのではないか。「『好き』を基軸に、『面白い』をループさせていけば、つながれるかと」

また、自らの子育ての経験でも、小中学生、高校生の居場所がないと思っていた。宿題や自由研究も、1人でやるのではなくて、地域にたくさんいるすごいスキルや知識を持った人に教えてもらえばいいではないか。

場所としての居場所だけでなく、同時並行で作らなければと痛感しているのが、心の居場所。これが好き、これが得意、ワクワクする、という、自分の魂のいる場所。そういうものを、今の子どもたちは見つけにくい。体験や経験の機会も少ない。大人が何か教え込むのではなく、タネをばらまいておけば、子どもは何かに引っかかるかもしれない。大人が当たり前と思うことでも、子どもは新しい視点から見るかもしれない。自ら「気づく」ということは尊い。

そこで2025年5月に団体を立ち上げ、子どもワークショップやキャンプの開催、地域の多世代が交流するイベントの運営を掲げて活動を始めた。1人ひとりの好奇心を引き出したいという想いから「Curious(好奇心の強い)」、地域の人々が「Buddy(仲間)」となって共に成長できる環境づくりをめざすという思いを込めてキュリナ・バディと命名した。

これまでに「放射線を見てみようワークショップ」や「読書感想文ワークショップ」のほか、奥多摩での夏キャンプを開催。木の棒をひたすら回して原始の火をつくる火おこし体験やキャンプファイヤーをやった。「1人でやっても火はおきない。2人で、4人で、、、と子どもたち自身がみんなでやることを考えて実践して、最終的には20人で回して火が付いた。もう感動して大騒ぎで。自分たちでつくった火でマシュマロ焼きしたことはきっとみんな忘れないでしょう」

イベントは子ども向けだけでなく、地域のお祭りとコラボしたクラフトビアガーデンや、ワイン会なども開いている。この先、やってみたいのは、アートと食をからめたまち歩きイベント。「アートとは無縁な人間なんですけど。。。」。もともとの商店街を活かしたい。空き家が増えて、すさんでいき、そのすさみが伝染しているのが気になっている。

遠い将来になるかもしれないが、千石に「必然性のある活気」を見つけたいと思っている。「寺が建つ、門前町ができる、というのはその土地にあるべくしてなっていると思う。千石にもきっとそういう何かがあるはず」。地理や歴史を調べ、ポイントになるものを探ってみたい。次の世代が、千石で育ったんだ、とプライドを持てるように。サイトやInstagramで情報発信中。(敬)

