目白台のあたりをゆっくり自転車で通り過ぎると、ふわ~んと、あのなんともいえない香りが。銀杏の季節です。
息子が小学校に上がる前、この近くの運動公園で日が暮れるまで遊んだことを思い出します。夕日が見えたらお友達と別れがたくなって、親たちが早く帰ろうよと促している間に日は暮れて……ああもう秋なんだねと、なんとも切なくなる時間です。
そして、お外帰りの冷えた体にうれしいのが、あたたかいお夕飯。当時息子が、あたたかいスープをいただくたびに胸に手を当て「ああ~、心があったかくて気持ちいい」と言っているのを聞いて、妙に感心したものです。そうか、たしかにそうだね。あたたかいスープは体だけでなく心もあたためてくれる。それが家族や大好きな人たちと一緒の時間なら、なおさらだね。
そんなわけで、今月はこちらの絵本をご紹介したいと思います。
『もっと もっと おおきな おなべ』
寮 美千子 作
どい かや 絵
フレーベル館
はじまりは、秋の森でかごいっぱいにきのこをつんだねずみさんが、きのこのシチューをこしらえたこと。しょっぱいから水を足してとやっているうちに、ねずみサイズのおなべは今にもあふれそう。
困ったねずみさんがりすさんのところにおなべを持っていくと、一回り大きいおなべに移し替えてくれます。と、そこまで良かったのだけれど……せっかくだからと、りすさんがおいしい栗とクルミを入れたら、なんと、またあふれそう!
その後もうさぎさん、やぎさんとおなべのリレーは続いていきます。最後にクマさんサイズのおなべいっぱいにシチューが出来上がったところで、森のみんなが大集合。おおきなおおきなおなべをみんなで囲んでふうふう食べるシチューの、なんておいしそうなこと。
これぞ、秋の最高のごちそう。あたたかいお鍋と大好きな人たちの笑顔があれば、それだけで幸せになれる。そんな季節です。
(OSAGARI絵本・伊藤みずほ)