今年は暖冬かなあと油断していたら、ぐっと冷え込んだこの数日。行き交う人の服装やせわしない足取りに年の瀬を感じます。
子ども達にとっては、1年で最もわくわくする時期でしょうか。サンタさんにどんなお手紙を書こうか、希望のプレゼントはちゃんと届けてもらえるのか等、わくわくそわそわしながら過ごすクリスマスまでの日々もまた、楽しいものです。
ちなみに、プレゼントをじっくり吟味したいがゆえにサンタさんへのお手紙がギリギリになってしまう我が家の息子も、今年は早々と大きな画用紙にメッセージを書き上げ、本棚の上にオープンスタイルで(?)立てかけていました。今年は一つに絞らず、ほしいものを全て書き出した模様。サンタさん、どうするのかなあ……。
クリスマスにほしいプレゼントを「ぶお(ど)うのラムネ」と言っていた2歳の息子を思い出しながら、今月は、少し大きくなった子どもと今こそ一緒に読みたい絵本をご紹介します。
『サンタさん ありがとう ―ちいさなクリスマスのものだがたり―』
長尾 玲子 さく
福音館書店
クリスマスを前に、ちいさなしんちゃんがサンタさんにお願いしたのは、「いっしょにあそべておともだちになってくれるかわいいかわいい」くまさん。しんちゃんのお手紙はきたのくにのサンタさんの元に届けられましたが、子ども達へのプレゼント準備で忙しいサンタさん。すべての準備が終わったときに、しんちゃんのくまさんを忘れていたことに気が付きます。そこでサンタさんがしたことは、くまさんを型紙から作ること。そして……。
クリスマスに子どもに贈りたいものはこういうものだなあと、心にぽっと灯がともるようなお話です。子どもの年齢が上がるにつれ、サンタさんへのリクエストもぶどうのラムネから具体的な商品リストに変わったりするわけですが、しんちゃんの素朴な願いと、それに一生懸命こたえようとするサンタさんのまっすぐな思いは、今だからこそ心に響くものがあります。
また、ひと針ひと針大切に縫われた刺繍は一見シンプルなのにとても表情豊かで、くまさんが今にも動き出しそう。子どもも大人も、絵本を開くとその表現にわっと驚き、読み入ってしまう1冊です。
(OSAGARI絵本・伊藤みずほ)