厚めの紙を四つ折りにして開き、キラキラシールを貼れば即席のコマのできあがり。「手をふると模様が広がって見えませんか」。出展者の説明にうなずきながら、子ども心に帰ってコマを回してしまった。神保町の文房堂4階ギャラリーで18日(火)まで、ARTOY(アートーイ)展が開かれている。(過去記事参考)
ARTOYは、アート(芸術)とトイ(おもちゃ)を合わせた造語で、今回で20回目を迎えた。21人の作家が参加している。今回のテーマは「夢」。20回の節目ということで、各作家が選ぶ一番のお気に入りのパネル展示もある。
木のねじを回すとオルゴールが鳴り、シーソーが動き出す、という作品があった。「ただそれだけなんですが」
井上かおりさんは、在来種の生き物を布などで作って展示した。たんぽぽの花や綿毛はリアル。テントウムシやアリも生き生きしている。ヘビの指人形も。
小さな木の球が2つ、波状の溝を転がっていくと、きれいな木琴の音がした。「ベッドサイドに置けて、弱い力でも音が出ます」。入院中の子どものために作ったおもちゃについて、久保進さんが説明していた。「こちらはくるっと回してころころ転がるので、クルコロ。今年のテーマが夢だから、夢くるころ。夢とは、退院の日」。木の球を転がすゲームのような「止まらない夢」というおもちゃも。「子どもは7割がた成功するんです。球を投げる力加減をすぐ習得するんですよ」
からくり夢木箱は、大阪府富田林市の木工作家の出展。仕掛けを見つけてふたを開けると、中にさらに木箱があり、それにもからくりがあるというもの。何人もが挑戦していたが、果たしてうまく開けられたか?
くるみ割り人形の童話をもとにした木のおもちゃには、トントン相撲の原理を使ったネズミの王様の相撲や、ビー玉を底につけた人形が踊るダンスホールがあった。出展者は名古屋市でおもちゃのひろば&工房を主宰している。
温泉地のジオラマが展示されているのは「私のオアシス地図」。今回の題は「三日月池温泉」に以前作った「さわやかな空気の中で」をつなげたもの。春夏秋冬の景色も入っている。「低い位置から写真を撮るといいですよ。池に木々が映る角度もあります」と、作者の能仲リエさん。
初日には、20回記念として、ARTOY展発足時に場所を提供し、毎回のテーマを考えている「すどう美術館」館長の須藤一郎さんのお話会もあった。須藤さんは88歳。菅創吉の作品に出あったことがきっかけで会社勤めのかたわら作品収集をはじめ、「世界一小さい美術館」として自宅で「すどう美術館」を始めた。その後銀座に開設していたとき、出展者の1人と知り合い、2004年11名の作家の参加で初めて開かれたのが第1回のARTOY展だった。「作家のモチベーションを高めようと、3回目からお題を出すことにした」という。「のぞく」から始まり、「つなぐ」「無限」「存在」「流れる」「架け橋」など、毎回のお題に基づき、それぞれの作家が製作に励んできた。「須藤さんとの出会いがなければ、ここまではやれなかった」と久保さんは言う。
それぞれユニークな作品が勢ぞろい。ARTOY展は文房堂4階ギャラリー(千代田区神保町1-21-1)で、18日(火)まで開かれている。11時~18時まで(18日は16時まで)。入場無料。一部購入もできる。