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「ユネスコとユニセフの違いは何でしょう?」子ども・青年理事が企画、文京ダイバ-シティ・ユネスコ協会設立イベント

8月31日といえば小学生や中学生にとって夏休みの宿題に追い込みをかける最後の日だ。九州から西日本を通って関東を直撃すると予報されていた台風が逸れて、湿気を含んだゆるい風が吹いている。そんな日に跡見学園女子大学文京キャンパスでは「文京ダイバーシティ・ユネスコ協会」の設立総会と交流イベントが開催されていた。
イベントには数多くの小学生・中学生が参加し、ワークショップやクイズなどのコーナーを企画・運営するのも子どもたちだ。関係者によると、こんなことはこれまでにない、異例の事態だという。いったい何が起こっているのか?

文京ダイバ-シティ・ユネスコ協会子ども理事に就任した髙山結太君

「ユネスコ」という国連の組織の名前を聞いたことは誰にもあるだろう。「世界遺産」との関連で記憶している人が多いかも知れない。しかし、どんな活動をしているかと聞かれて答えられる人がどれほどいるだろうか。ユネスコ憲章の第一条に「この機関の目的は、国際連合憲章が世界の諸人民に対して人種、性、言語又は宗教の差別なく確認している正義、法の支配、人権及び基本的自由に対する普遍的な尊重を助長するために教育、科学及び文化を通じて諸国民の間の協力を促進することによって、平和及び安全に貢献することである」とある。要するに、教育、科学、文化を通じて世の中を平和にしようということだ。
一方の「ユニセフ」は紛争、災害、経済危機などの厳しい状況に置かれた子供の支援をしている団体だ。これらの違いを「ユネスコは未然に防ぐ、ユニセフは起こってからの対応」と、実に簡潔で明快な言葉で説明してくれたのは、小学6年生の髙山結太(ゆうた)君。彼はなんと、文京ダイバーシティ・ユネスコ協会の子ども理事の一人だ。

高校3年生の小木向夏(こぼくひなた)君は理事であり事務局長でもある。設立総会の総合司会を務め、全体を統括。「半分大人で半分子どもという立場で、大人と子どもの架け橋になれたら」と話す。理事で広報担当の高校3年生、清水万理(まり)さんはチラシの作成やSNSの投稿を手がけた。メンバーの高齢化が進むユネスコ協会の中で異色の存在となっている。実際、名称に「ダイバーシティ」がつくこと、事務局長が高校生というのは珍しいケースなので、日本ユネスコ協会連盟の中でも議論になったというが、多様性を採り入れる発想の独自性や体制の新鮮さが評価されたという。

高山陽介さん

会長の髙山陽介さん(結太君のお父さん)は、「教育が最初のテーマであるなら子どもが主体になって当然」と言う。髙山さんは隣の新宿ユネスコ協会でも数年前から理事を務めており、その経験から「文京区では子どもを中心に活動にしよう」とコロナ禍の始まる前から構想を練っていたそうだ。「全国にユネスコ協会の会員は約1万6千人いるけれど、平均年齢は73歳。一気に若返る。10代のメンバーに司会から中身まで任せた」と話す。「成功体験が次につながれば。何をやりたいかの前に、誰とやりたいか。目的達成のためでなく、コミュニティーとしてやっていきたい」

ワークショップで説明をする川口楓夏さん

交流イベントでは、世界遺産クイズや廃材ワークショップ、数人のグループでヒントを出し合いながら手札に書かれた数字を順に並べる「Itoカードゲーム」、放射線が見える霧箱作りなど、教育、科学、文化を題材にしたワークショップを子どもの発案で企画し、大人が手伝うというスタイルで、参加者は大人も子どもも大変盛り上がり、楽しい時間を過ごしていた。参加者の中には、海外からの留学生などもいて「諸国民の間の協力を促進する」というユネスコ憲章の理念が眼の前でそのまま形になっているのが印象的だった。

左から、戎井さん、森田さん、川口さん

設立メンバーは子どもだけでなく、ユネスコ活動の多彩な経験を持つ大人もいる。
玉川大学の学生時代にユネスコクラブに所属していた森田乃絵さん(写真中央)は世界遺産巡るスタディ・ツアーや小学校への出前授業などを通じてユネスコの活動に関わっていた。ユネスコクラブのある大学も珍しく、若い世代の経験者として貴重な人材だ。文京ダイバーシティ・ユネスコ協会には青年理事として参加する。
顧問の戎井七重(えびすいななえ)さんは旭川や杉並のユネスコ協会で主要なメンバーとして活動するなど長年ユネスコに関わってきた。ともすると権威主義的な傾向になりがちなユネスコの活動の中心に子どもを据えるのは画期的だとエールを送る。
長女の楓夏(ふうか)さんが子ども理事を務めることになった川口千里(ちさと)さんは「子どもたちがとても楽しそうに準備をしていました。多世代交流のイベントといえば大人が企画して子どもが参加するのが普通ですけど、逆に中学生や高校生が企画するイベントに大人が参加するというのはすごいことだと思います」と話す。

9/29には子ども・青年理事会の交流会としてボードゲーム、11/17(日)には千石の童心社ホールで映画「こどもかいぎ」の上映会を予定している。未利用資源活用を学ぶ講座やこれからの社会のあり方をテーマにした映画の上映会など、子ども達が主体となって企画するイベントが動き出している。
文京ダイバーシティ・ユネスコ協会の活動に興味のある方は事務局(info.bunkyo.unesco@gmail.com)まで問い合わせを。サイトInstagramでも情報発信中。(竹形誠司)


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