文京区本郷の元町ウェルネスパークが、オレンジ色に染まった。にぎやかなマツケンサンバの踊りをバックに、ランナーがスタート。東コース、西コースに分かれて、11月16日、認知症への理解を深め、共に生きる社会をめざすまちづくりのイベント「RUN伴(らんとも)文京区2025」が開催された。ランナーやボランティアは約130人、地域の居場所や高齢者施設での応援、イベント参加者などを含めると、400人以上が参加した。

今回初めて、元町ウェルネスパークをスタートゴールに設定。多目的室で朝10時に開かれた開会式では成澤廣修区長も参加。選手宣誓は、若年性認知症で昨年もランナーとして走った藤島武彦さん。「考えてきたこと忘れちゃったけど」と周囲を笑わせたが、参加者の名前が書かれたタスキを胸に、はつらつと出発した。

コースは2つあり、地域の居場所や高齢者施設を結び、参加者の名前が記入されたタスキをつないだ。RUN伴文京区のコンセプトは「ごちゃまぜで誰もが暮らしやすい地域をつくる」「施設と居場所をつなぐ」。多世代ごちゃまぜ、おたがいさま、が合言葉だ。スタート地点の元町ウェルネスパークでは、順天堂医院認知症疾患医療センターの専門相談員による出張相談会のほか、NPO法人地縁の輪の協力で、知的障害のある方たちによるタッチケアも体験できた。

東コースは東大赤門前で、小規模多機能型施設「ユアハウス弥生」の利用者さんとスタッフ、子どもの発達支援を手がける本郷のTASUC文京の子どもたちらと合流し、東大構内をそれぞれのペースで歩いた。RUN伴は走る区間もあるが、場所によっては高齢者施設の利用者と一緒に歩く区間もある。東大構内ではまばゆいイチョウの黄葉のもと、車いすのお年寄りと子どもが自然に触れあっていた。

ユアハウス手前のケアギルドトーキョーでは、サンバ隊が待っていてくれた。文京区内のケアマネジャーら、医療・介護関係者や子どもたちで結成されたチームだ。

ユアハウス弥生に到着すると、さっそくマツケンサンバと、今年の新作、東京ブギウギを披露。お年寄りも手拍子を打つなどノリノリで聴き入った。

7月に自主上映した映画「30(さんまる)」(過去記事参照)の鈴木七沖監督も飛び入り参加。「あのとき、11月にイベントがあると聞いて駆け付けました!」という。

居場所と施設を結ぶだけでなく、根津神社のような見どころも多い。旧安田楠雄邸庭園の前を通り、車いすの方と歩いて着いた有料老人ホーム「ホスピタルメント文京グラン」の向かいには、東京都指定文化財だという茶室、半床庵がたたずんでいた。

地域の居場所、動坂テラスでは、手打ちの「ビリーうどん」の提供があり、ランナーたちもひと休み。

デイサービス「ヨウコー駒込」でも、車いすの利用者さんたちが出迎えてくれた。

今回初めて参加したグループホーム「お寺のよこ」は、文字通り養源寺の参道沿いにある。養源寺はマルシェやコンサートなど様々なイベントが開催されることで知られるお寺だが、マルシェにかかわっている近所の方もワンちゃんと共に応援に駆け付けた。

「グッドライフケアホーム向丘」手前の本郷税務署前からは、歩く区間。利用者さんと一緒に歩いてゴールすると、「がんばって♡」「やすんでいって♡」などと書かれたうちわを持った利用者さんたちが待ち受けていた。

言問通りを下って到着したのは旧伊勢屋質店。明治時代に建てられた建物で、現在は跡見学園女子大学が「菊坂跡見塾」として活用している。「区民だけど入ったのは初めて」と、ランナーたちも興味津々で中に入り、学生たちの説明を受けていた。

同大教授の土居洋平さんは「質札を再利用してはたきなどにもしていたようです。ふすまの裏にも質札が貼ってあって、これを分析したら樋口一葉の質札が出てくるかも」と話す。旧伊勢屋質店は、樋口一葉が通ったことでも知られている。東コースはここが最後の拠点だった。

一方、西コースは壱岐坂を下り、富坂を上って、小規模多機能施設「いきいき礫川」へ。利用者さんの歓迎を受けたあと、伝通院の前を通り、エーザイへ。

エーザイでは、脳を活性化する運動や、脳の健康度チェック、脳トレゲームが体験できたほか、認知症に関するショートムービーの上映、ドリンクやアプリの提供など、様々なイベントがあった。また2023年からRUN伴文京区に参加している車いすの方が待機しており、そこからワークスペースさきちゃんちまで、吹上坂を歩いて下った。

ワークスペースさきちゃんちでは明治安田の協力で、手や指をかざすなどするだけで血管年齢が測定でき、野菜の量が足りているか測定するベジチェックができた。

そのあとランナーは小石川植物園沿いを走り、網干坂を駆け上がって千石の住宅街を抜け、グループホーム「泉湧く憩いの家」に到着。そこから不忍通りを渡ったコーシャハイム集会室では、長谷川式スケールによる認知機能検査の体験会をやっており、地域の高齢者の団体「丸山延寿会」のメンバーらが30人ほど集まっていて、ランナーを出迎えた。

長くて急な宮坂を下るとまもなくコドモカフェオトナバーTUMMYに。ここでは東コースの動坂テラス同様、ビリーうどんが提供された。ちくわやかまぼこで顔の形に盛り付けられ、コシのある手打ち麺に、ランナーや集まった人たち約70人が舌鼓を打った。

そこからすぐの地域の居場所「氷川下つゆくさ荘」では、認知症について楽しみながら学べる「いたばし認知笑かるた」を楽しめた。子どもからお年寄りまで楽しめるボードゲーム大会も。

千川通りを渡った先の特別養護老人ホーム「文京くすのきの郷」では利用者さんらが出迎えた。ゆるく坂を上がって春日通りを越え小日向台地へ。有料老人ホーム「グランヴィ小日向」では、隣接するグループホーム「優っくり村」の利用者も集まっており、「必勝」「全力応援」と書かれたお手製のうちわで応援。ここでもサンバ隊の踊りが華々しく披露された。

近所の地域の居場所「こびなたぼっこ※」までは、歩く区間。車いすの人を交え、ゆっくりと歩いた。こびなたぼっこ※では、生活クラブ生協まち文京千代田の協力で、温州みかんジュースが提供され、参加者は「つぶつぶがあって本物のみかんの味がしておいしい」と大好評だった。

大日坂を下ると、障害児者支援の施設「リアン文京」に。ここでもサンバ隊が歌と踊りで迎えた。ここから有料老人ホーム「杜の癒しハウス文京関口」までは歩く区間。利用者さんと共に、神田川を歩いて渡り、ホームに到着した。

次の特別養護老人ホーム「洛和ヴィラ文京春日」まで走ると、入居者がずらりと並んで待ち受けて歓待された。そこからゴールの元町ウェルネスパークまでは一走り。壱岐坂を息せき切って上り、オレンジ色のテープを切った。ランナーや拠点での応援者の名前が貼られたタスキが東コースの8拠点、西コースの14拠点を経てゴールした。

閉会式もサンバ隊が盛大に踊り、締めくくられた。実行委員長の竹形誠司さんは「今年も2月から毎月2回、20回もミーティングを重ねた。上映会もやって好評でよかった。イベント当日だけが目的ではなく、つくっていく過程が楽しいということが大事」と話していた。(敬)

