今春、文京区では認可保育園が5カ所(うち1園は認定こども園)新設されたが、それでも入れない人が続出し、保護者たちが認可保育園増設を求める522名分の署名を4月6日、成澤廣修区長に手渡した。成澤区長は「今年度の状況は看過できないと認識している。だが面積や保育人員の要件の緩和策はとらない。ニーズ調査に基づく保育園増設の目標は達成したがそれを上回る需要となった。認証園が待機児童の受け皿になる状況がいいとは思えない」などと話し、小規模保育の拡充なども視野に、短期的、長期的な対策を講じると約束したという。
署名活動は、認可保育園に申し込んで「不承諾」となった保護者らが中心になって、3月10日から4月2日までの24日間で、電子と紙による署名活動を展開していた。区長室で区長や幼児保育課長に面会したのは保護者7人で、うち2人は乳幼児連れだった。
やりとりの中では、質を保つことはもちろんのことだし、認証園が待機児童の受け皿になるのが正しい姿とは思えない、という区長の考えを保護者は理解しているものの、「復職のためにはどこか預け先を見つけなければならない。本当に子どもに悪影響がないと言えるのか」「認可園を増やすことは重要。しかし近隣対応などで5年もかかるようでは、今の子どもたちは小学生になる。その間、保護者は職を失うかもしれない。0歳児対象の小規模保育をやってほしい」「そもそもニーズ量の調査について不満」などといった意見が出されたという。
署名した親の1人は「他区の認証保育園(認可外)になんとか滑り込んだが、来春はまた保活をしなければならない。今春の状況を見ると、再び入れないのではないかと心配なので、増設をしてほしい」と話す。
認可保育園は2016年4月現在、文京区内に私立公立合わせて55園あり、定員は約千人。2月に発表された1次募集の結果で、認可園に申し込んだものの、希望者が多いために保護者の就労状況などの選考が行われた結果、500人近くが「不承諾」となった。中でも特に0~2歳児クラスの希望者が多く、不承諾となったのは700人近く。これはすべて待機児童になるわけではなく、認可外園や、認可外のうち東京都が補助金を出している認証園、保育ママなどに預けられるケースもある。さらに今年度から礫川公園内に0~3歳児62人定員の春日臨時保育所が開設され、不承諾となった人の受け皿となることが期待されていた。
ところが、フルタイムでさえ、区内の認可保育園にすべて不承諾となった人が続出。育休延長で対応できる人はいいが、延長ができない1歳児や、募集枠の少ない2歳児クラスで落ちた人の中には退職せざるを得ない人もいる。保護者の中には、月十数万円を払って認可外に預けている人もいた。文京区内では、認証園の認可化がすすめられた結果、認可外の園が数園になってしまったため、待機児童の受け皿が減ってしまった。他区の認証園は「区民優先」を掲げており、来年も継続して在園できる保障はないという。
署名では、春日以外の臨時保育所の設置や認定こども園増設など、実質待機児童の受け皿の拡大や保育園誘致場所の確保、データの公開や予算の拡大を求めた。1時間以上の及ぶ面会で、成澤区長は保育士や場所の確保の困難さをあげたうえで、対策を講じることは明言したという。