播磨坂近辺で、人を乗せたロボットが「こんにちは!」と周りの人に声を掛けながら走っているのを見たことはないだろうか。文京区小石川から中央区へ本社を移転したROBO-HI株式会社(旧ZMP)が開発した自動運転歩行速モビリティ「RakuRo(ラクロ)」だ。このほど、体験会が播磨坂であった。

ラクロは国内で唯一、人が乗って公道を走行できるロボットだという(※)。「時々見かけるけど乗ってみたいという地域の人の声を受け、みなさんに知って親しんでもらおうと企画した」と広報担当の木村寛明さんは言う。体験会は事前予約制で、募集した25組は満席だった。

木漏れ日がゆれる播磨坂のB-ぐるバス停あたりから坂を少し上って旋回し、下って旋回して戻るコース。丸い目の人なつこそうな顔。ラクロの目を見て「かわいい」と声があがった。出発の時は目が星になる。曲がるときは目が曲がる方向を向く。木村さんは「目の動きはコミュニケーション上も大事。人とすれ違うような感覚ですれ違うことができる」と言う。

歩道を歩くような速度で自動運転するので、人はただ乗って座っているだけだ。でも、向かい側から歩いて来る人や自転車を認識してぶつからないように避けている。小さい子が急に飛び出してきても、センサーで感知して即時に止まるという。

人がラクロの前に立つと止まり、目にうるうると涙がたまってきて、こう言う。「すみませんが、道をお譲りください」。うるんだ目でこのように話しかけられると、こちらも感情が動かされる。

実際に体験させてもらった。乗り心地はいい。ゆっくりと歩くスピードでコトコトと坂を上り、ターンのときは歩道と車道のきわすれすれまでスペースを活用してターンを行っていた。歩いて来る人には「こんにちは」と話しかけ、人が前に立つと止まり「すみません」と言う。100メートルぐらいは見えているといい、かなり手前から、どちらに行くかをAIが決めて、障害物を回避するという。

体験会に小学生の娘と参加した男性は「子どもがけがしたときなどに使えるといいですね」と話す。「学校や幼稚園の送り迎えができると便利かな。高齢化社会なので、お年寄りが使って、行動範囲が広がるといいですよね」

参加者アンケートでは8割以上が「非常に満足」と答え、「表情があるため人との共存がしやすく、受け入れやすい」「シートもフカフカで右左折時も安定感のある乗り心地」「見た目も動きもとても可愛らしく、一瞬で大好きになった」といった声が寄せられた。

ラクロは様々なイベントに登場しているほか、姫路城や千葉市の動物公園で期間限定で観光案内に出動していたこともある。ラクロのほか、配送ロボ「DeliRo(デリロ)」、警備ロボ「PATORO(パトロ)」があり、あわせて「ライフロボ三兄弟」というらしい。今後まちで見かけることがあるかも?(敬)
※簡便な手続きである「届出」制度で、人を乗せて公道を走行できる唯一の機体(道路交通法上の遠隔操作型小型車)。

