「じゃんけん、ぽんけん、しむらけん!」。男の子たちは元気だ。よく晴れた春休みの日、文京区初とされる地域の民間学童保育「アクティブキッズ目白台クラブ」に通う子どもたちが、目白台運動公園へ繰り出した。そのあとは光が丘公園へ。「長期休みの間はたいてい外に出ます。雨の日でも川崎や台場の民間企業の施設や、博物館などに行きます」と、開設者の上田泰正さん。「電車の乗り方や道路の歩き方といった基本マナーを身に着けるのに、外出するのはいい勉強になる」
弁当持参だが、近隣の大学のキャンパスを訪れ、学食で食べることもある。池袋や四ツ谷あたりまで足を延ばすことも。「学校見学になりますね、と親から思わぬ反響がありました」
上田さんは子どもの小中学校のPTA会長や、町会長も務め、中高生の自然体験活動などをするNPO法人「響きの森net」の理事でもあり、長年地域活動に携わってきた。学童保育を始めたのは、近年、区立の育成室(学童保育)に入れない待機児童が増えていること、かつて子どもが育成室に通っていたころ、18時までしか預かってもらえないためやりくりに苦労した経験があるからだ。
ちょうど、「学習教室の空きスペースをシェアして使っていいよ!」と申し出てくれる人がいた。「行政のやりきれない部分をフォローできれば」と、2013年の春休みから小学生の預かりを始めた。学習教室とのタイアップで学習面のサポートが受けられるほか、送迎サービスもある。学校が休みの日は朝8時から、夜は午後9時まで。6年生まで通え、1日単位で保育が申し込める。
売りは、夏休みと冬休みのキャンプや、週末に農業体験や自然体験ができること。上田さん自身、アウトドア関連の著書もあり、響きの森netでキャンプのノウハウもある。「体験活動が豊富なほど、学力が高いという文部科学省の統計もある。自然体験で子ども本来の生きる力がつくはず」
経営的には厳しい。区立の育成室の利用料が安いだけに、始めた当初、児童数は思ったより集まらなかった。「文京区はよくがんばっているけれど、大人数を受け入れて待機児童をなくすことが、親にとってはありがたくても、子どもにとっていいものかどうか。18時に1人で子どもを帰すことも疑問に思う」。子どもの安全や豊かな体験活動を確保しつつ、働く親の応援をし、経営も成り立たせたい。試行錯誤の日々が続く。(敬)