地域発、民間の学童保育②まちの人が「先生」/地域交流型のツリー・アンド・ツリー

林さん入り

 

「碁は算数を使うの。たすってのはないけど、かけるっていうのは結構ある」

地域の70代、80代の高齢者が、子どもたちと一対一で向き合い、囲碁を教えていた。本郷小学校の隣のビル1階で、3月24日から本格オープンしたツリー・アンド・ツリー本郷真砂の学童保育の一コマだ。春休み中は、東京大学の学生がジャグリングを披露したり、近所の和菓子屋さんがお菓子作りを教えに来たり。地域交流型の学童保育をめざしている。

 

10歳と0歳の子がいる代表の林育恵さんは、別世界の業界からの「転職」だ。1年前 までは、企業の合併や買収といった大きな金を動かす金融系の仕事をし、海外出張も経験した。しかし、子どもを産んで、地域とかかわるようになって、考えた。「会社員生活はいずれ終わり、子どもも独立する。その先の人生、どんな暮らしが理想なんだろうか」。地域とつながりながら、そこで朽ちて、死んでいく。精神的に豊かな老後を過ごせるのがいいのでは?そのような老後の暮らしのある社会を創ることに関わることができたら?

  林さん(林育恵さん)

 

仕事にやりがいはあったが、「もっと直接的に、足元の社会課題のために今の自分ができること」のような物差しで仕事を見つめるようになった。その点、地域の活動は直接的で、リアルに実感できる。ニーズが高い学童保育と高齢者の介護を組み合わせた事業を地域でできないか。思い切って会社をやめ、1年ほど前から準備をしてきた。

廊下

(隣室とをつなぐ廊下も子どもの居場所になる)

 

昨年の春休みや夏休み、期間限定で子どもの預かり事業を開始。地域の人が囲碁や工作や手芸を教え、認知症サポーター講座なども実施した。「囲碁の先生とまちで会ったよ」という子どもの声も聞かれるようになった。「知らない人と話してはいけない、という昨今、地域の人と顔見知りになれば、声かけもできる。子どもが地域で見守られ、地域の人も子どもにかかわるきっかけができる。そこも大きなねらい」と林さん。

ダイニングキッチン

(明るいダイニング。子どものいない午前中の使い方を模索中という)

 

本郷地区でまちづくり活動をしているNPO法人「街ing本郷」の会員でもあり、改装は街ing本郷人脈で手がけた。保育室のほか、ダイニングキッチンもある。6年生まで通え、1日単位での利用も可能だ。

キッチン

将来的には学童だけでなくシニアの方々も地域で支える事業をめざしている。当面は学童保育だけだが、「とにかくやってみなければわからないことがある。地域を巻き込むいい事例をつくれれば」。学童保育をとっかかりとして、高齢者をはじめとする地域住民に親しまれる場をつくりたい。コミュニティーをつくるとはどういうことか。まずはそこから、チャレンジ精神で臨んでいる。(敬)