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OSAGARI絵本のよりみちにっき/クリスマス劇で希望の役になれなかったら?

今年もやっと重い腰を上げて、OSAGARI絵本のクリスマス支度をはじめました。倉庫の一角にある小さな絵本屋ですが、窓辺にサンタさんやミニツリー、そしてクリスマス絵本を並べたら、ちょっとはそれらしくなった、かな?

さて、クリスマスといえば保育園や幼稚園では年に1度の生活発表会を行うところも多いのではないでしょうか。我が家は息子がキリスト教の幼稚園に通っていたこともあり、毎年この時期はクリスマス・ページェント(イエス様の生誕劇)に向けていろいろなことがありました。

年少さんは真っ白なふわふわ帽子で羊に、年中さんは銀色に輝くお星さまに。そして待ちに待った年長さんでは、マリアやヨゼフ、宿屋や羊飼いなど、一人ひとりにセリフや歌等の“見せ場”があります。

息子の幼稚園では“どうやって役を決めるか?”ということから子ども達が知恵を出し合い考えていました。かけっこにじゃんけんにくじ引きと、いろんな方法を試して1週間が過ぎたころ、ようやく配役が決定。年少時から憧れていた「東の国の博士」になれた息子ですが、希望の第一博士ではありませんでした。そのことで大荒れ……役を得たお友達に強い言葉を言ってしまい、しばらく気持ちを立て直せなかったというお話を、お迎え時に先生から伺いました。

その晩、息子とたくさん話しました。悔しかった息子の気持ち、強い言葉を言われた相手の気持ち。私の保育園時代のほろ苦い思い出話(お姫様になりたかったのに、なぜかタテガミふさふさのライオン役だった!)などもしつつ、たくさん泣いて笑ったら、寝る前には「第一博士じゃないけど、第三博士だっていいよね。没薬(もつやく)だって大事だし。明日N君に、ごめんねって言ってみる」と息子。子も親も、気持ちがたくさん動いた夜でした。

翌朝、幼稚園に向かう自転車の後部座席で「N君に、ちゃんとごめんねって言えるかな」と不安そうな息子。でも、下駄箱でN君を見かけたらぐっと覚悟を決めて「昨日はごめんね」と。一瞬きょとんとしたN君が「いいよ!」と言うと、2人は肩を組んで2階に駆けて行きました。ずっとずっと、忘れられない光景です。

そして、もしも「希望の役につけなかった」と悲しんでいるお子さんがいたら、お子さんの気持ちに寄り添う絵本を一緒に読んでみる、というのもいいですね。

『クリスマスのほし』

ジョセフ・スレイト/文

フェリチア・ボンド/絵

クリスマス劇に出たいやまあらしのぼうや。でも、「ぼくのすがたはおかしいな」と自分の容姿を気にしている様子。だいじょうぶよとお母さんに励まされて教会学校に行ってみたものの、仲間からはそのトゲトゲの容姿を理由に「幕引き」と「お掃除」の裏方仕事がいいと言われます。

クリスマスが近づくにつれ、仲間たちは配役や衣装も決まり忙しそう。でも、やまあらしのぼうやには役も衣装もありません。

そして迎えたクリスマスの日。なんと奇跡が起こります。劇中のアクシデントで皆が慌てふためくなか、ヤマアラシのぼうやはそのトゲトゲを生かして、他の誰もがなしえない大役を見事に果たすのです! 最後にお母さんがつぶやいた「わたしのこころのひかり」という言葉にも、じんわりと胸が熱くなります。

希望が叶わずがっかりしても、後で振り返れば「すべてこれでよかった」と思えることもありますね。クリスマスの夜、あっちにもこっちにも「こころのひかり」がともりますように。

OSAGARI絵本・伊藤みずほ)


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