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小石川植物園が発見と創作の場に/1万人近くが訪れた小石川植物祭

「葉も花も すべてが大きい ホオノキの木!」

小石川植物園園長の川北篤さんが読み札を読むと、一斉にホオノキの葉の上にたくさんの手が重なる。「はい」「はい!」「ハイー!」

植物園内の植物の葉を取り札にした「葉っぱかるた」。2022年10月に初めて開かれた小石川植物祭でお披露目された。

「ギャンブルに 負けてボロボロ バクチノキ」「指先で 手紙が書ける タラヨウの葉」「恐竜の 手のひらみたい ヤツデの葉」・・・参加者は葉っぱかるたを取ることに夢中だが、次々読まれる句には植物の知識が満載。かるたのあとは、園内のどこでその葉っぱが見られるかを案内するツアーもあり、楽しみながら植物について学べるワークショップだった。

「街が植物園へやってきて、植物園が街へ広がっていく」をキャッチフレーズに行われた小石川植物祭は10月21日~23日の3日間開催された。来場者は1万人近く。総合ディレクターで建築家ユニットKASAの佐藤敬さんは「はじめは、私とコヴァレヴァの2人だけの個人的な思いだったものが、動いてみる事でどんどん輪が広がっていった。100名を超えるボランティアさん、出展された作家さんやお店、地域住民や地元企業、公共施設、年齢層も幅広く、いろんな人がいろんな形で協働して、結果として1万人近くの方々にまで届いた。それがとても感動的で嬉しい事だった。たくさんの方へ感謝を伝えたい」と話す。

公募などで近隣の店や団体など17カ所の出展があった。パン店や菓子店による植物園の植物を使ったパンやジャム、菓子の販売もあったが、すぐに売り切れるほどの人気だった。園内の和ハーブなどをドリンクとして飲める鬼丸食堂の「ボタニカルカフェ」は行列が絶えなかった。八つ橋の香りに使うニッケイの葉が香るコーヒーや、松の葉を煮出した松葉茶などの飲み比べは新たな学びの体験だった。

植物園近くにある内田染工場では、園内のソメイヨシノやオオシマザクラを使って染めたハンカチやトートバッグを販売。草木染ワークショップも開催した。サクラの花をイメージさせる薄いピンクのトートバッグは、サクラの枝から抽出した色なのだそうだ。

小石川植物園は、いろいろな小説に登場するという。「小石川植本屋」は、植物園が登場する本を並べてはいるものの売ってはいない。その小説に出てくる場所を探してきてください、という。園内のそこかしこに「コモン君がデンドロカカリヤになった話『デンドロカカリヤ』阿部公房」「躑躅は美なりしなり。『外科室』泉鏡花」といった短冊がぶらさがっており、「あ、あった」と参加者が駆け寄る場面も。

こどもの本屋「てんしん書房」は、植物園の生き物や植物たちがどんな暮らしをしているのか、絵本を通して知ろう、という企画をやっていた。

香りを通して植物を読む、というひとひねりした展示もあった。柑橘類や樹皮などの香りをかぐコーナーや本が並ぶコーナーがあった。もちろん、香り高い花梨の実も。

なるほど、そうきたか、と思える新鮮な企画が並んだ。楽しく散策しながら発見や気づきがあり、植物の学びが深まった。まさに植物祭のねらいどおりと言えようか。

来場者からは「植物園との距離が縮まった」「森を歩きながら出展者を探し、途中で植物を体感するという企画自体が素敵だった。来年もぜひ開いてほしい」「人や街や植物がつながるきっかけになったと思う」などの感想が聞かれた。次回開催を求める声も多いようだ。(敬)

小石川植物祭の情報はサイトInstagramFacebookで発信中。


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