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ヒバ香る繊細な薔薇/フラワーアートとワークショップのお店「Salon de Lino Lino」/芸工展2023まちかど展覧会訪問

根津の交差点から言問通りを上野方面に上がって、台東区のコミュニティバスの「東西めぐりん」のバス停、「吉田屋酒店」のすぐ近くに「Salon de Lino Lino」はある。

「東京、上野桜木に出来た『かんなフラワーアート』の専門店。香り豊かな天然ヒバの削り木を使って花びらを作り、薔薇に仕上げている。精油を垂らせばディフューザーとして使える木でできた薔薇…」(抜粋)とパンフレットに示されている通り、店内はヒバの削り木でできた薔薇の商品がいっぱい。ヒバの香りもいっぱい。ヒバは香りが強く抗菌・防虫の作用もあるという。

商品は、手軽に楽しめるブローチや髪飾り、何気ない数本の薔薇の置きものや、ウエディングなどのお祝い用の、大きく華やかに花器に飾り付けたものなど、さまざま。また、お風呂に浮かべて精油をたらし香りを楽しむための薔薇や、削り木をいっぱい袋に詰めた商品もある。木の香りが飛んだら、洗濯用ネットに入れて外干し乾燥させ、精油をかけてもう一度楽しむことができる。予算や用途に応じてオーダーも受け付けている。

カンナで削るヒバは、青森から仕入れているが、一部は製材所からの廃材をアップサイクル(捨てられる予定のものに新たな価値をつけて再利用)して製作しており、SDGsアートとして注目され、シンガポール大使館にも飾られているという。

店では、ものづくり体験やカンナ削り体験のワークショップも開催している。ガラス扉の外の空間には、作業台が設置され、ヒバの木片、カンナが置かれていて、代表取締役専務の木下元介さんが、通りすがりに立ち止まって目を止める人たちに、デモンストレーションのようにヒバの木片を削ってみせて、その削り木を無料で提供してくれる。削りたての新鮮なヒバの香りが通りにパっと広がりさわやかだ。かなりの率で通行人は立ち止まって作業台を見たり、店内を覗いたりしているので、木下さんは忙しそうだ。

ヒバの削り木の薔薇が生まれたきっかけは、4年前、原宿の東郷神社の境内と記念館で開かれた「NIGHT東郷」という和文化発信イベントだった。観光で来日した外国人が夜に楽しめるコンテンツが少ないと思い、日本にたくさんある寺社を舞台に和文化や飲食を提供し、インバウンド向けに日本の魅力を伝えたいと思ったという。「そのとき大工の棟梁やハンドメイドの作家さんらみんなで集まって、来賓の方に削り木の薔薇を差し上げようというアイデアが出されて。それがこの商品の発祥なのです」と木下さん。ヒバの香りがとてもよいこと、カンナという道具が日本古来のものであること、そこに繊細な手仕事があれば、一つの日本の魅力をこの薔薇に託して伝えることができると確信した。

3~4年前、木下さんが以前の仕事でつながりのあった羽田未来総研が、原宿駅前の「with原宿」という新しいビルに日本の工芸品のセレクトショップを出店することになった。そこのプロデューサーから何か日本の魅力を伝えるアイテムはないかと木下さんに相談があった。「ふと薔薇を思いついて」。それが商品化の入り口だった。

「NIGHT東郷」で作った薔薇は粗雑だった。「それをいかにしてアートの域まで昇華させようかということで現社長と私で大変苦労してきました」と木下さんは振り返る。日々失敗や成功を重ね、現在に至る。最初は細々と委託販売や出店をしてきたが、2022年11月に株式会社に、2023年2月20日、上野桜木に店舗を持つことができた。

お店でまちの客やインバウンドへの売り出しもするが、主には事業者向けに展開していきたいという。「ホテルで、お風呂に浮かべたり、アメニティギフトで部屋においてもらったり、お土産に持って帰って貰ったり、企業などで受付の飾り花として使ってもらったり」。環境にやさしいこの商品をもっと広げていきたい、という。

芸工展参加は31日まで。お店は月曜定休、火曜不定休で、11時~18時。11月9、10日には、浅草の東京都立産業貿易センターでの「東京くらしのフェスティバル」への出展を予定している。(稲葉洋子)

Salon de Lino Lino(〒110-0002東京都台東区上野桜木1-10-17 I Terace 上野桜木101)Tel:03-6770-4111 E-mail:info@linolino.tokyo


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