まだ地ビールと言われた時代、国内第1号のクラフトビールのビアバーとしてオープンし、クラフトビールの聖地と呼ばれている両国の「麦酒倶楽部ポパイ」。タップが100もあり、圧倒される。店から徒歩15分ほどの両国麦酒研究所で自家醸造するビールをはじめ、厳選された国産のクラフトビールがずらり。様々なスタイルが味わえる。
1985年に居酒屋としてスタートした「ポパイ」は、1996年にクラフトビール専門としては全国で初めてとなるビアバーとしてオープン。「全国の地ビールが飲める店」として始まり、30年近く、ぶれずにおいしいクラフトビールを追求してきた。現在のマスターは2代目の城戸弘隆さん。うっかり、創業者の青木辰男さんの息子さんかと聞いてしまったが、「バイトで入って、先代から引き継ぎました。先代の教えは、反抗しつつ、受け入れました」と笑う。
2014年から創業者の故郷の新潟に醸造所をつくって自家醸造を開始。2020年にポパイの近所に両国麦酒研究所をつくった。コンセプトは「ビールは一期一会であってはならない」。クラフトビールブームで、多種多様なビールが登場しているが、「1回飲んでおいしいビールだったけど次に出合えない、のではなく、普通に、当たり前においしいビールをつくりたい」という。ブームはつくりたくない。「おいしいビールを飲める文化」を志している。「このグラス穴開いているんじゃない?と言われるような、無意識に飲み進んじゃうビール」が理想だ。
こだわりは酵母と水。酵母は生きものなのでタンクの底に残っている酵母を使いまわすことは可能だ。しかし両国麦酒研究所では仕込みごとに自家培養した新しい酵母を使っている。また、日本は軟水が多いがビールは硬水が適しているビアスタイルも多い。そこで純水装置に水を通して一度硬度ゼロの純水にし、ビールのスタイルに一番合う硬度に整えた水を使っている。
それだけではない。「ドイツでは、ビールをつくるのは醸造所、完成させるのはパブだと言われています。私たちの仕事は、おいしいものをおいしく出すことです」。ビールのおいしさを最大限に引き出すポイントは、洗浄はもちろんのこと、ビールごとのガス圧の調整とサービング(注ぎ方)の調整だという。そこを徹底している。
そういえば、ビールにあまり泡が立っていないと思った。「調整できていないと泡が立ってしまう。泡がいけないわけではなくて、ビールのスタイルによっては泡を立てない方がいいのです」。泡が風味を閉じ込めるとか、泡あってこそのビールだと思い込んでいたが、そうではないようだ。グラスにもこだわっている。
ポパイのビールとは?「オアシス、でしょうか。現代社会はストレスフルな時代。ホップがストレスを緩和し、苦味がストレスを開放するそうです。みんなでビールを飲むと気分が高揚する。元気になれる。泉にわき出る泉のような飲み物ですよね」。両国駅西口徒歩1分。都会のオアシスでのどを潤してみては。(敬)
麦酒倶楽部ポパイ(墨田区両国2-18-7)
営業時間:月~金: 15:00~23:30 土・祝:14:00~23:30 日曜定休