西片の住宅街のはずれ、魚店「魚福」の向かいにある「ツイタチビール」。クラフトビールの量り売り店だ。専用のカードを使い、タップから好きなビールを選んで自分で注ぐ。
1オンス（oz＝約30ml）いくらという料金設定なので、注ぎながら画面で12345・・と上がっていく金額が見える。飲みたい量で止めてもいいし、金額で止めてもいいのがうれしい。
「クラフトビールを飲みに行くのが好きだけど、パイントで頼むと量が多くて、好きな種類やスタイルに偏りがち。気になるビールに挑戦しづらくて」と、女性店主（20代）は言う。クラフトビールと出合ったのは友人に誘われて飲みに行ったことがきっかけ。それまでビールは苦くてのど越しが良いというだけで、おいしさは理解していなかった。クラフトビール店で、「ガツンと飲みごたえがあるIPAを飲んで」衝撃を受けた。「こんなビールがあるんだと驚き、ビールの印象がガラッと変わりました」
1パイントは米国では約473ml、英国では約568mlとされ、日本では英国パイントを使うのが通例らしく、ハーフパイントという提供の仕方もあるものの、ちょっとずついろんなビールを試すわけにはいかない。そして、お値段もそこそこする。恵比寿に量り売りのクラフトビール店があることを知った。こんなのあるんだ。これなら差別化できそう。飲み手にもいい。。。
看護師として3年ほど病院に勤めてきたが、いろいろあって悩んでいた。起業してクラフトジンジャーエールを作っている友人から「やれば。手伝うよ」と言ってもらい、起業を決意。2024年10月に「ツイタチビール」を開店した。
「ツイタチ（朔日）」は門出とか始まりを意味し、縁起がよいと考えた。お店の場所は、向かいの「魚福」の倉庫だったところを改装。魚福で刺身を買って持ち込んでビールを飲むこともできる。「両親には反対されたけど、押し切りました。思い立つと突然活動的になって勢いが出ちゃうのです」。看護師資格があるから、つぶしもきく。
クラフトビールは国産のものを仲介サイト経由で入荷。スタイルが偏らないようにセレクトしている。通りから1本入った路地沿いで、人通りも少なく、たまたまふらっと入る人はいないが、常連さんもできた。「大学教授とか、専門職の方とか、これまで出会ったことのない人と出会えたり、私よりビールに詳しい人からおすすめを聞いたり。お客さん同士の出会いのきっかけになれたらうれしい」
お店はタップが並んでいるほか、数人が腰かけると満席になってしまう壁際のベンチ、小さなテーブルがあるだけ。ガラス張りなので外からよく見える。ボトル持参で持ち帰りも始めたという。開店1周年記念として、31日まで文京区のブルワリーのビールを集めた特別イベントを開催中だ。
詳細はツイタチビールInstagramで。（敬）
ツイタチビール（文京区西片2-19-23 103）
月–金18:00–23:30, 土日13:00–23:30
