「この建物、要塞みたい」「景観的にどうなんだろう」
千葉のおもしろい建物がプロジェクターで大画面に映し出されると、参加者からさまざまな声が飛び交う。
沖縄の城(グスク)への旅の紹介では、「実は私は沖縄に住んでいまして」という話が飛び出し、米軍のオスプレイの飛行写真は物議をかもした。
3月2日(日)、千駄木の狸坂文福亭で、「アルバムカフェ」が、これまでと違うスタイルで開かれた。「今回はスマホから写真をプロジェクターに映す方式で話が弾みました」と、「みんなのアルバム」の会代表の秋山由佳子さんは言う。
参加者それぞれのスマホに入っている写真を、プロジェクターに写してみんなで見る。紙の写真でも、その場でスマホに取り込める。
「みんなのアルバム」は主に文京区民の有志が作っている小さなサロンだ(過去記事参照)。100年後に残すべく、みんなで手持ちの昔の写真を持ち寄ってスキャンし、画像にしてアルバムにまとめたり、さらに紙媒体の冊子にしたり、それをイベントで紹介したりする活動を始めて7~8年になる。
今回のテーマは「旅行」。
千葉や沖縄のほか、日光へのサークルの旅行、京都の市電、などなど、この日の参加者5人のスマホから写真が大画面に映し出されるたびに、会話が弾む。同じ場所に行ったことがあったり、以前その場所に住んでいたり、今でも親戚の方が住んでいたり、話がどんどん膨らんでいった。
せっかく旅行をしても忘れてしまうことも多い。大きな画面で共有して話を出していくと、忘れていた旅を思い出すだけでなく、他の人の思い出や面白い話とつながっていき、濃くなっていく。世の中のさまざまな課題や、その土地の文化、交通事情、巨大な建物への疑問、果てはサトウキビのジュースを売る「おじさん」の話につながったり。
知らない人同士が持ち寄った写真なのだが、数十年前の写真を並べてみると、どの写真もその頃の町並み、家の作り、その時代のファッション、家の中の装飾品、子どもの遊具など共通しているものがたくさんある。小さい子どものいるどこの家でも、家族の集合写真や子どもたちの写真にはそばに、同じような「セルロイドの起き上がりこぼし」が写っていたり、海水浴で子どもたちが被る「水泳帽」などは、どの人の写真でも同じ形、柄の帽子をかぶっていたり。同じ時代なら、どこでも同じような文化に彩られているのを、発見することはとてもおもしろい。
課題もある。昔の写真は捨ててしまっている人も多いし、とってあっても取り出すのが大変になっている場合が多い。また、写真をスキャンしたりするために預けるとなると、集合写真などは肖像権もあり、提供しづらい。そのためかなかなか提供者も出てこない。それでも、冊子アルバム画像はテーマごとに編集し、4~5作品作った。さらに別のテーマに沿って、冊子も3~4作品作った。
年3~4回開催してきて、常連もいる。写真をもとに集まって話すのはとても楽しいので、カフェはもっと開催したいし、もっと参加者を増やしたいのだが、写真を集めたり冊子を作ったりする作業の手間がかかり、頻繁には開けなかった。そこで思いついたのは、スマホの写真を大きな画面でみんなで見る「アルバムカフェ」。スマホの写真さえあればすぐ開催できる。
「このスタイルならすぐにカフェが開けて、誰もが楽しめる」と、カフェの回数を増や予定だ。もちろん、これまでのように、過去の写真を提供してもらいアルバムを作り、100年先まで残していくという活動は続けていく。(稲葉洋子)